第40章 宴だ!
カナエが先陣を切って飲み始めると、それに続けと、その他大勢の船員達も酒を酌み交わし始めた。
そこへシャチが、まだ残っていた料理を、一皿に綺麗に盛り付けて持ってきて宴が再開。
ジャンバールは、たくさん飲めと言わんばかりに酒樽をカナエの近くに置いている。
ペンギンは、まだ鼻を啜っていたカナエの背中を優しく擦っていた。
「カナエさん、まだラザニア食ってねェだろ?」
『うん、ありがと。』
ラザニアが盛られた小皿をシャチから受け取った。まだ暖かくてチーズがとろけている。
カナエは美味しそうに頬張った。
『あ、まだ飲む?』
「ああ。すまん。」
ジャンバールの樽型のジョッキが空になった事に気が付いて、カナエは酒を注いだ。
「カナエさ、あっちの世界に戻ってたんだよな。その間は何してたんだ?」
『ずーっと仕事してた。それか自分の家にいたかな。』
「退屈じゃないのか?」
『退屈だよ。毎日同じ事繰り返してるだけだもん。楽しみは飲みに行く事くらいかな……。』
「本当に酒好きだな。」
『私の酒豪っぷりには職場でも定評があります。』
「なんだソレ。」
ペンギンは軽快に笑って、酒を口に含む。
気心の知れた仲間と気張る事なく。
盛り上げようとしなくても、自然と笑い声が湧き上がる。
彼等と会話に言葉を選ぶ必要はない。
(優しいな、皆。)
誰も泣いている理由を聞いてこない。
興味が無いのではなく、今は話したくない事が分かっているからだ。
話したくなったら話せば良い。
そんな彼等の気持ちが心に沁みる。
気持ちが穏やかになる。
(背中の視線は痛いけどね……。)
相変わらず彼女は、じーっとこちらを睨んでいて、チクチクと背中が痛む気がしてきた。
(直接聞けば、か。)
ローに会うまで、自分がどう出るのか分からない。
彼が不在にしてイッカクと対峙する可能性もある。
うやむやにしようと思っていても、本人を目の前にしたら答えを求めてしまうかもしれない。
「ラザニア、一口貰って良いか?」
『どうぞー。』
「あ!ペンギンこのヤロ、それ間接キッス!カナエさん!俺にはあーんして!!」
『するかっ!!』
楽しいな。
取り敢えず、背中に刺さるものと悩む事は忘れて。
今はこの時間を楽しもう。