第40章 宴だ!
「クロウマンだったな。」
「うおっ!ビックリした!そうだけど?」
壁になっていたジャンバールが、突然こちらに振り向いた。元々怒っているような顔だが、それが更に凄みを増している。
今の会話を聞いていただろうか。
「何をコソコソ話している?何故カナエが泣いているんだ。貴様の仕業か。」
「違うって。こいつが勝手に泣き出したんだよ。」
「何も無いのに泣く事があるのか。貴様がきっかけを与えたのだろう。」
「ま、まぁ、否定は出来ないけど……。」
ジャンバールの睨みにトミダは体が固まった。
話は聞かれていなかった様だ。安心した。
「あっ!カナエさんが泣いている!」
「どうした?大丈夫か?」
カナエの異変に気が付いたペンギンとシャチが近寄ってきた。それに続いて、その他大勢の船員達まで。
こんなに人が集まっては、皆の注目を浴びてしまう。
見て欲しくない人にまで見られてしまう。
カナエは、ちらりと視線を彼女の方に向けてみた。
ああ、見ている、見ている。
目が据わっている。
あ、今舌打ちしたな。
このままだと目が合ってしまいそうだ。
それは避けたい。もう見るのは止そう。
視線を戻すと、カナエに一体何をしたと、トミダが全員に問い詰められていた。
ペンギンは船員3に、槍を持って来いと静かに指示を出している。
帽子に隠れて表情は分かりにくいが、何だかオーラが恐ろしい。
「ええー!俺、超悪者じゃん!スズキ、何とか言えよ!」
『トミダさんにいじめられたぁー。』
「あっ、てめっ……!………………ん?」
「「「「せーーーーーーのっ!!」」」」
「きゃーーーーーーーーーー!!!」
きらり。
胴上げをされる様に担がれたトミダは、皆の息の合った掛け声と共に放り投げられ、少女の様な叫び声を上げて夜空の星となった。
「ざまーみろー!!」
「槍は要らなかったか。」
「当然の報いだ。」
『はは。漫画みたいだな……。漫画だけど。』
自分の気持ちを切り替える為の冗談だったのだが、悪い事をしたようだ。
まあ、彼は飛べるから特に心配は要らないだろう。
それより、皆が心配そうにこちらを見ている。
これでは、せっかくの宴が台無しだ。
『さー!飲み直すぞー!!』