第40章 宴だ!
『お待たせー!シャチ特製、鯖の味噌煮!』
「うおー!!うまそー!!」
「こりゃあまた、一風変わった料理じゃけえ!」
居住区の中心にある広場では、旦那を囲んで既に宴が始まっていた。ハートの海賊とミンク族、何十人いるか分からない程の大宴会だ。
『え、も、もう無い……。』
樽になみなみと入っていた、ミンク族に伝わると言う木の実から造られた酒はもう空っぽで、ついさっき持ってきた筈の、大皿に盛られたカエルとトカゲの唐揚げも無くなっている。
『すごいな……。空いたお皿下げるねー。』
「悪ィな。」
この宴の席にいるのは怪我人ばかりだと言うのに信じられない食欲だ。彼等の回復の早さには驚きだ。
『ペンギンくん、飲んでる?てか、飲んで大丈夫なの?』
「平気平気。カナエも早く座って飲めよ。」
『でも、酒が……。』
「新しい樽、今ジャンバールが取りに行ったよ。」
『ヤッタね!もうすぐシャチが最後の仕上げだって言ってたから、それが出来たら飲むよ。』
「そうか。」
「姐さんは働き者っスね!イッカクとは大違いだ。」
「何だと、テメェ!!」
船員2がイッカクの飛び蹴りを食らった。
(逃げよう……。)
イッカクは今の一言で随分不機嫌になってしまった。
否、イッカクは常に不機嫌だ。
出会ってから、ずっと。
カナエが話し掛けても、一応返事はしてくれるものの目は見てくれない。もちろん、イッカクから話し掛けられる事は無く、笑顔を見せてくれるなんて以ての外だ。
人見知りだとか、無愛想だとかの類いではないと思われる。カナエ以外の仲間達や、ミンク族といる時はとても楽しそうに笑っているからだ。
あの時感じた、彼女の黒いオーラは気のせいでは無かった様だ。
『はぁ。やだやだ……。こういう感じ……。』
何をした訳でも無いのに、明らかな敵意。
ただ存在が気に入らないだけなのか。
それとも、気づかない内に自分が何かしたのか。
何も言ってこないから余計にモヤモヤする。
『うーん。』
心当りは、無くもないが。
『あーもー!後で旦那と遊んで来よう。気晴らしに。猫じゃらしでニャンニャンと……。ふふ。』
「ストレスか?」
『ぎゃっ!』
調理場へ戻ろうとしていたカナエの目の前に、ぬっ、と現れたのは酒樽を抱えたジャンバールだ。