第39章 大丈夫。
「本当にこれで良かったんですか?何かカナエさんに悪いわ……。」
「イイのイイの。迫真の演技!グッジョブ!」
落ち込んだ様子のトリスタンに向かって、トミダはビシッと親指を立てている。
なるほどな。そう言う事かい。
『貴様の差し金か、トミダトーリ……!』
「あ、バレた?」
般若の様な顔をした女がトミダに近づいて行く。
トリスタンはオロオロと慌てて謝っていて、可愛らしさを感じるくらいなのに、トミダは全く悪びれた様子が無い。
口を押さえて笑いを堪えている始末だ。
「お前、超焦ってやんの。ぷぷー!」
『くっそ腹立つ!!!』
どうやら、トミダの趣味の悪いドッキリだったようだ。
死にかけていたペンギンを最初に見つけたのはトミダで、チョッパーの的確な処置のおかげで一命を取りとめた。
カナエの事を話してやると、ペンギンは会いたいと言うし、トミダもカナエを早く連れて来て、安心させてやりたかった。
だがどうせなら、この起伏の無い話の流れに少しでも華を添えてやろうと思い立ったらしい。
『ありがたいけど、余計なお世話です。』
「ゴメンねゴメンねぇー。」
『それ、もう古いと思います。』
「カナエ、仲間に会えて良かったな!」
『チョッパーのおかげだよ。ありがとう。』
「俺に礼は!?」
『ありません!!』
「ガーン!」
チョッパーは、嬉しくなんかねェぞ!と、嬉しそうに踊っている。
良い事をしたつもりだったトミダは、ショックで膝を抱えてしまった。
「トーリ、そろそろ行くぞ。」
彼らは、まだ残っている怪我人の治療に向かわなければならない。
チョッパーとトリスタンはトミダをズルズルと引きずりながら、あとは頼んだぞ!と、その場を離れて行った。