第39章 大丈夫。
「おー!カナエ!本当に戻って来てたのか、久しぶりだな。」
『あ、えーと、え?』
想定外の光景が、カナエの目に映っていた。
こちらに向かって大きく手を振っているのは、チョッパーでもトミダでもない。
『えぇぇ…………ウソおぉぉん…………。』
「ど、どうしたんだよ……。」
ペンギンの元へ到着すると、そのままカナエは地面に倒れ伏してしまった。
『元気そうだね、ペンギンくん……。』
「あァ。死ぬかと思ったけどな。」
ペンギンはニカッと笑う。
包帯だらけの体はまだ言う事を聞かないようだが、彼の顔は随分と明るく穏やかだ。
それと反対にカナエは、しくしくと地面に突っ伏したまま。
「2年ぶりなのに、もっと何か無ェのかよ。俺はお前のお兄ちゃんだろ?」
『うん、そうなんだけどね、何となく……いや、確実に死亡フラグが立っていたからそんな展開かと……。』
「………………俺、死ぬ予定だったのか?」
『違うよ。でも、死にかけの所を私の血の力で怪我を治して毒ガスを体内から取り除いて涙ながらにペンギンくんの復活を喜ぶ、なんてストーリーが待ち受けていると思っていたのですよ。』
「そうか……。もう考えるのが面倒くさいんじゃねェかな。」
『そんな事無い……!こんな感じの方がこの作品らしいと思っただけさ!!』
「あと、血の力とかにあまり重きを置きたく無いってのもあるらしいぞ。」
『そうなんだ……。』
「二人とも何を言ってるんだ……。」
「おー、シャチ。いたのか。」
「いたよ!ずっと!!」
シャチの鋭いツッコミが炸裂した。
こんなやり取りが当たり前のように出来る程に彼らは元気だ。
それなのに、トリスタンのあの慌てた様子は何だったのだ。あんな風に急き立てられて、大きな勘違いをしてしまったではないか。
くそ。恥ずかしい。
「トミダさん、あの……。」
『ん?』
カナエが入れそうな穴を探していると、トリスタンとトミダがコソコソと話しているのが聞こえてきた。