第39章 大丈夫。
「ゆティア、カナエさんよね!?」
『はっ、はい!』
ミンク族の看護師であるトリスタンが現れた。リスのミンクである彼女は、とても慌てた様子で駆け寄って来た。
「良かっ……た。やっと見つ……かった…… 。」
ずっと探して走り回っていたのだろうか。
ゼェゼェと苦しそうに息を切らしていて、言葉も途切れ途切れだ。
これ程までに必死になって自分を探す理由が思い当たらない。一体何の用だろう。
(擬人化したらキュート系美人。)
くだらない事を考えているカナエの前で、トリスタンは大きく深呼吸をしたかと思うと、ガシッ、と力強く両肩を掴んできた。
「ゆティアを探していたの!」
『えぇ!?』
「早く来て!」
言われるがまま、シャチと共にトリスタンの後を追う。
さすが、生まれながら天性の戦士だ。
看護師と言えど足が早く、カナエは付いて行くのに必死だ。
三人は、怪我の手当てや解毒処置を終えたミンク族の間を縫って走る。
皆、何事かと不思議そうに彼女らを見ていた。
何故、自分の事を知っているのか。
自分を探しているのは誰か。
それは、疑問に思うまでもない事だ。
該当者は一人しかいない。
『大丈夫だよね…………!!』
トリスタンの背中を見ながら、カナエは必死で記憶を呼び起こす。
イッカクの時と同じ場面だ。
巻八十一、第815話。
ルフィ達の前に、ローがハートの海賊団を引き連れて登場した。
「お見知り置きをォ!! " 麦わら " ァ!!」
総勢20人だと言う船員の中に彼の姿はあった筈。
そう、ベポの隣だった。
帽子が2年前と変わり、より彼の名前らしくなっていて、可愛いな、とプッと思わず吹き出した。
だが、それは漫画の中で見た事。
予定通りで無い事は何度かあった。だが、それは全て目の前で起こってきた。
考えたくない。
例外があるなんて事は、考えたくない。
「カナエさん!あそこよ!」
そこは、ネコマムシの旦那とイヌアラシ公爵が、見せしめに張り付けにされていた場所。
彼らは助け出されて、もういない。
その近くで座り込むチョッパーとトミダ。
その間に、可愛い帽子を被った男が、仰向けになって横たわっていた。
彼は動かない。
まさか。
『ペンギンくん…………!!』