第39章 大丈夫。
ゾウの国、中心部「クラウ都」。
到着してカナエ達が目にしたのは、崩壊した建物と、大怪我をして毒ガスに苦しむ数多くのミンク族。
ガスや火薬の、まだ強く残る臭いが鼻をつく。
目が痛くなりそうな程だ。
その中をサンジやナミ達、既に動けるミンク族や、砦の奥に避難していた者達が走り回っている。
皆は慌ただしい様子で、怪我の手当てや解毒処置を施していた。
ハートの海賊達は何処だろうか。
これだけ怪我人がいては、探し出すのは困難だ。
どうか。ここにいて欲しい。
「ジャンバール!イッカク!こっちだー!」
『あ。』
お調子者が滲み出た、懐かしい声がした。
大きく手を振りながら声の主が走って来る。
「え、あ!?カナエさん!!??」
『シャチ!!』
「カナエさんが戻って来たァァァ!!」
シャチは加速した。
ものすごい勢いで突っ込んで来た。
両手を上げているのは、ハイタッチをしろと言う事か。
「ウェーーーーイ!!!!」
『うぇ、うぇぇぇい……。』
「カナエさん!もっと、こう!高く両手を上に!ウェーーーーイ!!」
バチン!!と手のひらを強打され、カナエは思わずシャチを睨む。
『痛いんですけど……!』
「つれないなァ!久しぶりに会ったんだぜー!」
『何でこの状況でそのテンションなの。ドン引き。』
「くうーー!!相変わらず辛辣!!」
などと言いつつも親指を立てて満面の笑みだ。
2年ぶりのカナエの手厳しさは、シャチにとっては堪らないらしい。
彼の変態っぷりも変わらないようだ。
「カナエさん、こっち来て!」
『わっ!』
「ベポがさっき目を覚ましたんだ!カナエさん見たら喜ぶぞー!!ジャンバールとイッカクも早く来いよー!」
カナエの手を引いて、シャチは飛び跳ねるように走り出した。
彼も懸命に戦ったのだろう。体のあちこちに包帯が巻かれている。
繋いでいる手に当てられたガーゼにも、血が滲んでいて痛々しい。
『……シャチ、無事で良かった。』
「えっ!いやっ、あのっ、もしや俺に心変わり!?」
『違うわ!アホ!!』
「ちっくしょー!」
二人はベポを目指して走って行く。