第39章 大丈夫。
「…………ジャンバール。」
そこへイッカクがやって来た。
ジャンバールを見て、安堵の表情を浮かべている。
「イッカク、無事だったか。」
「ああ。アンタのおかげだよ。」
聞くと、ジャンバールはイッカクを毒ガスから逃がす為に力いっぱい放り投げたのだと言う。
やり方に些か疑問を感じたが、彼女を思っての行動だろう。
「アンタさ、カナエだっけ?」
『あ、はい。』
「コイツの事、何で知ってるんだ?ウチのつなぎ着て……アンタ誰だよ。」
『えーっと、ですね……。』
彼女とは初対面だ。色々と疑問に思うのも当然だ。どこから説明したら良いものか。
「以前話した事があっただろう。2年前まで船に乗っていた女だ。」
「一時的に船を降りてるって言ってたヤツか?」
(一時的……。)
「ああ、仲間だ。戻って来た。」
『ジャンバール……。』
「仲良くしてやってくれ。」
彼らにとっては2年だ。
2年もの間姿を消して、突然戻って来た自分を、さも当然の様に仲間と言ってくれた。
一時的に船を降りていた。
そうなっていた事も、何だか嬉しい。
カナエはイッカクに向かって、勢いよく頭を下げた。
『よろしくお願いしやぁっす!』
「……ふーん、アンタがね。」
(おや?)
「…………………………………………よろしく。」
気のせいだろうか。
あまり快く思われていないような。
こちらは深々とお辞儀をしているというのに、イッカクからは穏やかでない空気を感じる。
心なしか不機嫌な様にも。
(な、何だ?)
いや、だが彼女は海賊だ。
男に囲まれて生きているのだ。少しばかり、ぶっきらぼうでも仕方がない。
と、そう思いたいカナエは、あまり気にしない事にした。
それに今はそれどころでは無い。
仲間達の居場所は、だいたい把握している。
そう言うイッカクをジャンバールが腕に抱えて、三人はその場を離れた。
そろそろ毒ガスが中和されていても良い頃だ。
町に行けば、百獣海賊団と戦った者達の救助活動が行われている筈。
ハートの海賊団は、もう手当てをして貰っただろうか。
早くチョッパーを手伝いに行こう。