第39章 大丈夫。
「カナエちゃんだけじゃ危険だ!誰か一人でも残らねェと、」
『3人共行かなきゃ駄目なの!特にシーザー!絶対行けよ!!』
「てめェは何で俺にそんなに偉そうなんだ!」
町には毒ガスが充満している。
毒ガスを作ったのも中和できるのもシーザーだ。まだ残っているジャックの部下を倒すのはサンジの役目だし、チョッパーが行かないと被害者達の手当ては出来ない。
彼らには必ず町に向かって貰わなければ。
『心配いらないから。早く行って!』
「……分かった。だが何かあったら、とにかく叫ぶんだ。すぐに駆けつける!」
『うん。そうする。ありがとう。』
カナエが心配いらないと言うなら大丈夫なのだろう。
そう信じて、サンジ達は町のある方向へと走って行った。
『あぁは言ったけど……。』
本当に大丈夫かは自分でも不安だ。
この辺りにも敵がやって来るかもしれない。
暫くは木の陰にでも隠れて、ジャックの部下達が撤退して、毒ガスが中和されるまでじっとしていよう。
「なあ、アンタ、頼む……。」
カナエが女の横に座ろうとすると、彼女はまだ傷口が痛む体を起こして、縋るように声を掛けてきた。
『ちょっ、じっとしてないと……。』
「あたしをここまで逃がしてくれた仲間を探さないと……。手を貸してくれ……!」
『う、わ……分かった。』
正直、この場所から動くのは気が引けるが、ハートの海賊の誰かの事なら行かなければ。
彼女も随分必死な様子だ。その誰かも同じ様に傷だらけなのだろうか。
「あっち……だ。」
カナエは彼女に肩を貸し、指示に従って道なき道を進んで行く。
道中、彼女はイッカクと名乗った。
やはり聞き覚えの無い名だ。
イッカクはとても辛そうな顔で歩いている。痛みに耐えているのだ。
休むように促しても、急ぎたいと言って聞く耳を持たない。
『……じゃあ、ゆっくり行こう。』
「ありがと……な。」
イッカクが探しているのは誰だろう。
森の中をいくら見渡しても誰もいない。
象の皮膚の道が続く。
二人とも足元がおぼつかず、なかなか前へ進めない。非力なチビと怪我人では仕方のない事だろう。
そろそろ足が限界だ。
『はぁ、歩きにくい……。』
「悪ィ……な。」
『あ、ごめん!大丈夫。』
「あ……。」
『え?』
「いた!あそこだ!!」