第39章 大丈夫。
チョッパーがサンジの匂いを辿って草木を掻き分け進んで行く。
「こっちだ!」
暫くして、チョッパーを呼ぶサンジの声が聞こえた。
急いで駆け寄ると、膝をつく彼の前に、ぐったりと横たわる女の姿がある。
「傷だらけだ!早く手当てしないと!」
チョッパーは、医療道具の入ったリュックを降ろして女の応急処置を始めた。
傷口を消毒する度、女は顔をしかめて呻き声を上げる。これは例外無く百獣海賊団にやられた傷だろう。
しかし酷い怪我だが、息が苦しそうだとか嘔吐しそうだとか、そういった様子は見られない。彼女は毒ガスの被害は免れた様だ。
チョッパーの手当ても滞りなく進んでいる。
『なんとか大丈夫そうだね……。』
それにしても、サンジが美女がいると言っていたがその通りだ。
ウェーブがかかった艶々の長い黒髪。
厚い唇が印象的なエキゾチックな美人だ。
以前一悶着あった、ローの昔の女、シュルティを思い出す。
ここまで随分距離があったのに、顔を見分けるサンジの視力、と言うよりも美女センサーに感服だ。
「カナエちゃん、彼女の事は知ってるんだろう?」
『は?えっ?いや、似てる人は知ってるてけど……。知らないと思う……。』
「いや、だが彼女の着ている服はカナエちゃんと一緒に見えるが……。」
『えっ……。』
本当だ。
自分と同じ、生地の厚い白いつなぎ。
左胸には海賊のシンボルが。
このシンボルは、どう見てもハートの海賊だ。
『そ、そういえば……。』
今現在よりも何日も後の話になるが。
ルフィやローがゾウに上陸して、ハートの海賊が再び登場した時、2年前よりも人数がやけに増えていた様な。
チラッと、本当にチラッとだけ女性が一人いた……様な。
それが彼女なのだろうか。
「あ、あんたら……、ジャックの仲間じゃねェよな……?」
彼女がハートの海賊団の一員なら、皆の居場所が分かるだろうか。
『違うから、大丈夫。あの……』
「あたしの仲間が死にかけてる……!助けてやってくれ……!!」
『…………!!』
「あいつら町にいるんだ!早く……早く!!」
事態は思っていたよりも緊急を要する様だ。
早く皆を探しに行かなければ。
だが、怪我人をここに置いて行くわけにもいかない。
『チョッパー、サンジ。彼女は私が見てるから町へ向かって。』