第39章 大丈夫。
翌日。
サニー号が大海原を進む巨大な象を見つけたのは、カナエが大あくびをしている時だった。
昨夜カナエがナミと風呂に入った事で、トミダに深夜まで恨み節を聞かされたせいだ。
「ゾウ」は巨大な象の背に栄えた土地の名。
1000年もの間生きている象は常に動き続ける。船を見失わない様、鎖のついた錨を海底に投下せず、象の後ろ足に括りつけた。
『行っけー行け行け行け行けシーザー』
「いっけーいけいけいけいけシーザー」
『浮っけー浮け浮け浮け浮けシーザー』
「うっけーうけうけうけうけシーザー」
象は雲をつくほどの大きさだ。
象の背に上陸する為、シーザーは浮力の強いガスを発生させた。
彼は小舟を手に気球のようになり、カナエ、トミダをはじめ、ぐるわらの一味を乗せてゾウに向かって浮上している。
『ゴーゴーレッツゴーレッツゴーシーザー』
「ゴーゴーレッツご、」
「うるせェぞ!てめェら!!黙ってろ!!」
『応援してただけなのに…………。』
「そうだぞー。つれないぞー。」
「トミダは置いといて、カナエちゃんが応援してくれてんだ。もっとスピードを上げろガス野郎。心臓潰すぞ。」
「それが応援って顔か!?こっちは集中してるんだよ!」
シーザーの心臓を使ったサンジの脅しのおかげか、はたまた異世界コンビの無感情な応援のおかげか。シーザーの浮上スピードは劇的に上がり、あれよあれよと言う間に象の背に到着した。
「明らかに襲撃されてる…………!!」
ゾウの国の名は「モコモ公国」。
到着してすぐに国の名が刻まれた門があった。
しかし、その門は「誰か」によって無理矢理こじ開けられている。
「ブルック!トーリ!ナミさんとカナエちゃんをここで守れ。奥を見て来る。」
「お安いご用です。」
「オッケー。」
「せ……拙者も二人を守ってる!!」
サンジはチョッパーとシーザーを引き連れて門の向こう側へ足を向けた。
その三人の後ろ姿を、カナエは落ち着かない様子で見つめている。
「カナエ?どうしたの?」
『あ、えっと……!』
この門の奥には町がある。
マンモスの姿をした「旱害のジャック」に破壊され、全滅に追い込まれたミンク族の町が。