第39章 大丈夫。
ここで離れ離れになれば、カナエと二度と会えなくなる可能性は大いにあり得る。
しかし、ドレスローザに残って危険に晒すよりかは数倍マシだと考えた。
カナエが自分より先に死ぬよりずっと良い。
「ローも驚いたんじゃね?」
『……はい。あっさり受け入れたら、拍子抜けしてました。何でだよ、みたいな。』
カナエは、自分でも不思議なくらい素直に受け入れる事ができた。
もちろん、側にいたいと言う気持ちは強い。
だが、そうなる予感はしていたし、カナエ自身も、それが一番の得策だと考えていたからだ。
そして何よりも、あんなにも苦しげなローの表情は初めて見た。彼の思いを痛切に感じた。
「でも、モトキって奴がドレスローザにいるんなら何が起こるか分かんないだろ。本当に残らなくて良かったのか?」
『しつこいなぁ。そんな事は分かってるんですよ。』
「だったら、ローは刺し違える覚悟の筈なんだし、万が一って事も、」
『違ったんです。』
「違う?何が。」
『ローが言ってくれたんです。』
思ってもいなかった言葉を。
ゾウに行くように告げられた後、ドフラミンゴを見たチョッパーの雄叫びが扉の向こうから聞こえてきた時だった。
「ぎぃやあああ!!ドフラミンゴがまた来るぞ!!」
「ちっ、あまり時間が無ェな。」
『ロー、あの、』
「何だ。」
『何でも……。』
モトキがファミリーに関わっている事で、何か間違いがあってローが敗北する可能性もある。
だからと言って、死なないで、刺し違えようなんて考えないで、なんて事は言えない。
ローの強い意志の重荷になるような事は。
「必ず行く。」
行く?何処へ?
と、思うほど自分はお馬鹿さんではない。
『……うん。』
ローはこの時、先にゾウへ行った仲間達に、再び会う事は考えていなかった筈。
「待ってろ。」
『……うん、待ってる。』
笑ってしまう程ありきたりな会話だった。
しかし、死を覚悟している筈の男が待っていろと言った。
自分が存在する事で、彼に生き残る意志が生まれたのだろうか。
生への執着は、人を強くする。
大丈夫だ。
何があったって、きっとストーリーは元通り。
ローは必ずゾウへ来てくれる。
私の男は強いのだ。