第39章 大丈夫。
「スズキ、これで良かったのかよ。」
『良いんです。』
カナエが一頻り泣いた後、程なくして。
ローは、ROOM の中でバラバラにしたモトキとジョーラを人質に、再び船に襲いかかって来たドフラミンゴを迫り立て、ドレスローザとグリーンビットを繋ぐ橋へと向かって行った。
ドレスローザは、既に水平線の遥か向こう側。
二人は、あらゆる追っ手を振り切ったサニー号に乗船していた。
『しかし、ペコムズは可愛いかったな……。』
「あれは可愛いのか?お前がガオガオ真似してうるさいから怒ってたぞ。」
『すみません。』
雲ひとつ無い青い空と、湖のように静かな海は太陽の光をキラキラと反射させて美しい。
その様子をカナエとトミダは、サニー号の甲板から並んで眺めている。
とても神妙な面持ちだ。
『トミダさんは、愛しの船長の側にいなくて良かったんですか。』
「愛しのとか言うなよ。俺はサンジが心配でさ……。」
『私だって心配ですけど。トミダさんなんかに負けないくらい。』
「競うなよ。てか、いつの間にゾウに行くように言われたんだ?」
『船室に入った時です。』
「ああ、あのギャン泣きした後な。」
『そんなに泣いとらんわ!ローの心臓を取りに行ったら言われました。』
「げ。じゃあ生の心臓見たのか。俺、目ぇ逸らしたぞ……。」
『まぁ、ちょっとエグかったですね……。』
船室の中に隠してあった、立方体状のROOM の中に入ったローの心臓。
テレビでよく見る、実録!救命救急24時!等の緊急手術では内臓は白黒加工されている為、人生初の対面はなかなか衝撃的だった。
「なあ、行けって言われた時さ、嫌だ、とか私も行く、とかさ。可愛いワガママは言わなかったのか?」
『可愛くなくて悪かったですね。』
「言わなかったのか……。」
お前はゾウに行け。
サニー号の船室でローにそう告げられた。
ローがカナエの行く先を決めたのは、ドフラミンゴがカナエの目の前にいるのを遠目に見た時、背筋に恐ろしい戦慄が走ったからだ。
カナエはドフラミンゴから遠ざけなくてはいけない。
カナエがファミリーの手に落ちる事があれば、自分は正気でいられるとは思えないと、そう感じた。