第38章 ほっつき歩いてんじゃねェ。
「まあまあ若様、そんな事言わないでさ。もう俺達より戻ったんだ。カナエは俺と一緒にいるから、気が向いたらいつでも声掛けてよ。」
ポン、と高い位置にある肩にモトキは手を乗せた。
「よりが戻った?」
「そ。ロロノア・ゾロとデキてたみたいなんだけど、やっぱり俺の方が良いって。俺って罪な男だよねー。」
モトキは何故か得意気だ。
「へェ……。」
「それでさ、せっかくイチャイチャしてたのに何でか良く分からないけど気付いたらサンジがカナエ連れて行っちゃったの。それで追い掛けて来たんだ。若様、怒らないでね。」
ドフラミンゴには、出会った当初からカナエへの思いを事あるごとに語ってきた。指示に従わなかったのは仕方の無い事だと言いたいようだ。
「イチャイチャ、か……。」
そして、モトキは勘違いしていた。カナエはサンジに拉致され、自分に助けを求めていると。
「そーだよ。もうすぐ本番!だったのにさ、ひどいよね。カナエだって、あんなに盛り上がってたのに。」
「残念だったな。」
「まあ、カナエは無事だったし、これからヤりたい放題だから良いけどねー、超楽しみっ。」
「オイ、一体どういう事だ。」
『あ、えーと、え?』
「どうしたの?若さ……ま……、」
その時モトキは、目の前のそれは幻覚だと思った。
手を乗せた肩は、いつものフワフワでは無く、見覚えの無い黒い薄手のコート。
コートの下は、赤い派手なパンツではなくジーンズだ。靴も違う。黒い。
モコモコの帽子を頭に乗せて振り向いた顔は、見慣れたサングラスではなく、隈が際立つ目でこちらを見下ろしていた。
「じゃない!誰だっけ!!??」
あ、ローだ。
「チョッパー!ブルック!今よ!!」
「「うおおおォォォォ!!」」
「ぐるぐる巻きにしちゃいなさい!!」
ローがいる。
「え?何!?若様は!?」
「モトキ!あーた間抜け過ぎざます!」
モトキは極太のロープで芋虫のようにされてしまった。黒焦げのジョーラに叱り飛ばされている。