第38章 ほっつき歩いてんじゃねェ。
海の向こう側、程近くに巨大な植物が密集したグリーンビットが見えてきた。
ドレスローザとの間の内海にはサニー号が。
「なるほどな……!」
サンジの顔が変わった。
まるで怒った猛獣が目の前にいるかの様だ。
「俺が急がなきゃならねェ理由はアレか…………!」
彼の目線の先には、船を狙って飛ぶ桃色の鳥が一人。
『やべー!!来たあー!!!』
「カナエちゃん!しっかり掴まってろよ、行くぞ!」
『はい!!!』
サンジの空中歩行で空を駆ける。
ドフラミンゴ目掛けて、サンジの持ち前の脚力で空気を蹴り、あっという間に二人は海の上だ。
「受け取れ!!!」
『えっ?』
気付いた時には海に向かって放り投げられていた。
(そりゃあ、いたら邪魔だけれども……!)
何もぶん投げなくても。
カナエは目をぎゅっと瞑った。
恐怖で声も出ない。
受け取れとは誰に向かって言ったのだろうか。
確認出来ないが、自分の行く先にはサニー号はちゃんと海に浮いているのだろうか。
このまま水中へダイブもあり得る。
(誰でも良いので、しっかり受け止めてください。お願いします!)
「ヨホホホホ!お任せ下さい!!」
『まさかのブルックーー!!恐い!』
「ひどい!!」
カナエは無事にサニー号に乗船する事ができた。
そこには、ナミ、チョッパー、モモの助、そしてトミダもいた。
彼に、空を飛べる人が何故受け止めに来ないのか尋ねると、俺が守るべきはナミだ、と当然のように言われてしまった。
上空を見ると、サンジとドフラミンゴの空中戦が繰り広げられている。
『サンジのカッコ良すぎる台詞が聞けなかった……。』
「お前、あの高さから投げられるなんてな。なかなか経験できないぞ。ウケるー。」
『死ねばいいのに!』
「それが先輩に対する態度か!」
『知るか!』
「…………あのさ、」
『…………はい、』
「何か、すげぇこっち見てるんだけど……。」
『見てますね……。』
サンジは空中で身動きがが取れなくなっている。
ドフラミンゴは間髪いれず彼に攻撃を仕掛ける筈が、こちらをじっと見つめていた。
「『えーーーー!!!!』」
口の端に笑みを浮かべた天夜叉が、羽を広げて猛スピードで飛んで来る。
一体、何の用だ。
口を開けるしかないじゃないか。