第37章 嫌だなぁ。
「あ……あれ……?」
『えっ?』
「カナエちゃんに何しやがる
コラァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
『ええっ!?』
ドゴォ!!!という大きな破壊音と、男の怒声が響き渡った。
壁には美しい海が見渡せる窓があった筈。
しかし、窓ガラスは粉々になり桟はへし折れ、壁は無惨にも砕かれ大きく穴が空いていた。
煙の様に宙を舞う大量の埃、部屋に散乱する瓦礫。
その中をガシャン、ガシャン、と音を立てながら黒いスーツ姿の男が近付いて来た。
先程の怒声の主だ。
「昔の関係はどうであれ、レディはもっと優しく抱いてやるもんだぜ。ゲス野郎……!」
『サ、サンジ!?』
壁を突き破って現れたのはサンジだった。
煙草と潮風の匂いが鼻翼をくすぐる。
「いつまでカナエちゃんに抱きついてるつもりだ!?さっさと離れろ!!」
カナエに覆い被さったままのモトキ。
サンジに首根っこを掴まれ、引き剥がされたが様子がおかしい。
「ん?」
既に気を失っていた。
今まさに自分のモノを挿れようとしていた彼の状態は何とも無様だ。
『あ……はは、瓦礫が頭にでも当たったのかな……。』
しかし、サンジ登場の前に彼は倒れてきたような。
「チッ、ボコボコにする予定だったんだけどな。間抜けな面しやがって。」
モトキは哀れな姿のまま、壁の穴の向こうに放り投げられた。
外には勿論、人通りがある。
変態だ、猥褻物だ、等と人々の悲鳴が聞こえてきた。
(かっ、可哀想に……。)
元彼と言う関係が無かったとしても、あれにはちょっと同情だ。
「カナエちゃん!無事だった…………か……ぃ、
ぐはあ!!君はなんて格好を!!」
『え?………………わーーー!!!』
真っ赤なシーツが更に赤みを増した。
突然の事ですっかり忘れていたが、着物が乱されたままだった。
胸も、足も、淫らに姿を見せている。
慌てて隠してみたが、サンジの目には強烈に焼き付いてしまったようだ。
『お見苦しいモノを見せてしまって申し訳ありません……。』
「何を言うんだ!大きさだけが全てじゃない!形も大事だ!君は美乳だ!!」
裏が無いだけに、何だか落ち込む誉め言葉だ。