第37章 嫌だなぁ。
世界貴族、天竜人が自分達の為に各国から徴収させた天上金。ドフラミンゴは輸送船を襲撃し、世界政府を脅す事で王下七武海に加入した。
その事件を自分も見たかったのは置いといて、モトキがドフラミンゴの目に留まるとは一体どういう事だ。
『自分から仲間にしてくれって言ったの?』
「違うよ。若様から俺の所に来いって。」
『マジか、スゲェ……。血の力があるから?でも、ドフラミンゴがそれだけで仲間にして、しかも幹部にするとは思えないんだけど。』
ファミリーの幹部達はモトキのように、のうのうと生きてきた者はいない。
皆、苛酷な運命を歩んで来た者達ばかりだ。
『世の中ぶっ壊してやろうとか思うくらいの事でもあった?いくら異世界の人間で珍しいからって、呑気な奴がドフラミンゴに家族とは呼んで貰えないよね。』
「よく知ってるんだね………。」
『ま、まあね……。』
「こっちの世界に来て目が覚めたのは商船で、その船には5年くらい乗ってたんだけどね」
やはり、どこかで聞いた話だ。
お忘れの方も多いと思うが、ローがナーニ・カール島の老人から聞いた青年の話はモトキの事だったようだ。
「性格曲がった奴等ばっかでさ、気付いたらここに居たって言っても信じてくれなくて泥棒扱いされて、まずは拘束と執拗な暴力だよ、酷いでしょ。」
モトキの様子が変わった。
顔は薄笑いを浮かべたままだが目が笑っていない。何か黒いものが渦巻いているような冷えきった、生気の無い、そんな目だ。
『モトキ、大丈夫?』
敵とは言え、昔の馴染みだ。こんなに追い詰められた表情をされたら心配になってしまう。
「…………大丈夫だよ。ありがと。」
疑いが晴れると拘束は解かれたが、雑用として休む間も無く働かされた。暴力は続いた。
だが月日が流れ、異世界の存在を確信した商人達は手のひらを返したようにモトキへの態度が激変した。
「俺を奴隷として天竜人に献上でもするつもりだったんじゃない?俺が逃げ出さないように必死だったんだよねー。人間の汚いトコロ、いーっぱい見たよ。」
それが原因で昔と雰囲気が変わってしまったのか。淡々と話しているが、人格が変わってしまう程、悲惨なものだったのだろうか。