第37章 嫌だなぁ。
『ここ、どこ?』
目の前にあるのは、海が見える住宅街の中の一軒家。
それほど大きくは無いが重厚感がある白い壁の家。中に入ると質の良さそうな家具や調度品が並べられていた。
ここはドレスローザのどの辺りだろう。
こちらを気にしながらその場を立ち去ったゾロを見送って音速で移動するモトキに必死でしがみついて、いつの間にかこの場所まで来ていた。
「俺の家だよ。」
王宮やコロシアムが何処かに見えたら、大体の場所くらいは把握できたかもしれない。
しかし移動が早すぎて、それを確認をしている余裕が無かった。大失態だ。
「そこ座って。美味しいシェリー酒があるんだ。飲む?」
『飲む。』
モトキがここでナニをするつもりかは明白だ。
ゾロに強気の発言はしたが、元彼とは言え、いざとなると腰が引ける。
何とか会話だけを続けて、時を見て逃げ出す事が出来ないだろうか。
逃げ出せたところで迷子になるのは目に見えているが、好きでもない男とセックスするよりはマシだ。
モトキはカナエの横に腰掛け、シェリー酒をフルートグラスに注いだ。
レーズンのような香りが鼻をくすぐる。
「どうぞ。」
『ありがと……。』
お酒の注ぎ方もグラスの渡し方も何だか手慣れていて、まるでホストを相手にしている様だ。
よくやってんだろうな……こういう事。
「王宮にも俺の部屋はあるんだけど、あいつらプライバシーってものを知らないからさ。若様に愚痴ったら俺にくれたんだ。」
こんな男の為にドフラミンゴが?
この高そうで色鮮やかなゴブラン織のソファもドフラミンゴが購入したのだろうか。
そういえばモトキは幹部だと言っていた。
ドフラミンゴの幹部達に対する処遇は家族以上だ。その中の一員なり、家を贈られる程の信頼を得る事が出来るだなんて。
『いつファミリーに入ったの?』
「10年くらい前だよ。こっちに来たのはもっと前なんだけどさ、商船に乗ってた時に若様に会ったんだ。」
『商船?』
どこかで聞いた事のある話だ。
「天上金とかってヤツの輸送船と一緒に俺の乗ってた商船もマリージョアヘ向かってた時だったんだ。珍しい本とか金ピカのお宝とか、天竜人への色んな貢ぎ物を運んでたんだよね。そこに若様達が襲撃してきてさ。」
『それって、ドフラミンゴが七武海に入った時の……。』