第36章 何してんの!?②
「どういうつもりだ?」
ゾロはカナエに合わせて声を潜めた。
『あいつの事は私に任せてほしい。ゾロはこんな所にいちゃダメだから。』
「……だが、あいつはファミリーの幹部なんだろ?お前で何とかなるのか?」
『私の血の力は相手の力を支配する事ができる。何とかする。』
「そんな力もあんのか……」
一度しか使った事の無い血の力。どうしたら相手に効くのかイマイチよく分からない。
でも、その事は黙っておこう。ゾロに信用してもらう為だ。
「しかし曖昧な力じゃねェか。必ず使えるもんなんだろうな。」
うっ。信用されていない……。
『頼りなくてごめんなさい……。でも、ゾロがあいつに手を妬いてる時間はないから。ね、ウィッカ。』
「そうれす!ドンキホーテファミリーが麦わらの一味の船を襲いに行くのを確認しました!隊長に居場所を報告しなくちゃ!」
「何!?」
「だから私をお花畑に連れてってくらさい!」
『ゾロ、そういう事なのれす!ここに居てはいけないのれす!』
「何なんだ!その喋り方は!」
『可愛くて、つい……。そんな事より早く行かないと!』
「くそ!のんびりしてる暇はねェって事か。」
仲間に危険が迫っている。
今は切羽詰まった状況だ。あのいけ好かない男をカナエに任せるしかないのか。
ゾロは非常に不本意だった。
散々自分を挑発してきた男に背を向ける事はもちろん、カナエをあの男と二人きりにするのが何故か気に食わない。
「……死ぬんじゃねェぞ。」
頼りにしていない、と言うよりは本当に心配しているような言い方。
ぎゅっ、とゾロの腕に優しく力が込められた。
意外なゾロの一面に、カナエは戸惑いを覚える。
『大丈夫!大丈夫!あいつに殺すつもりは無いでしょ。』
「そうだったとしても、何されるか分からねェだろ。」
『大丈夫だって!もう清らかな乙女って歳でも無いしガラスのハートでも無いしね。ホント、私の事は気にしなくて良いから!』
ゾロの腕はカナエを解放しない。
彼らしくない行動に驚かされてばかりだ。
『あの、えっと、ホラ!とにかく早く!モトキにも疑われちゃう。』
「…………武運を祈る。」
『そっちもね。』
「別れのキスでもしとくか?」
『ゾっ……ゾロはそんなキャラじゃない!!』
「悪かったな!!」