第36章 何してんの!?②
『モトキ待って!』
「何?俺とヨリ戻すんなら、もう関係無いじゃん。それとも未練でもあるの?」
ゾロを気にしないで、こっちを向くにはどうしたら。
『わっ、私が生きてるのはゾロのおかげなのヨ!』
「ゾロの?」
『そう……昔々、私が異世界の人間だと知ったバギーという凶悪な海賊が何とか私を手に入れようと襲ってきたのですが、いち速く駆けつけて来てくれたゾロが絶体絶命のピンチを救ってくれたのです。』
「バギーは知ってるけどさ、何が言いたいの?」
自分でもよく分からない。
とにかくゾロを追い掛けないでほしい。
『だから、その、ゾロが私の事を守ってくれなかったら、こうしてモトキとまた会うことはできなかったんだよ。ゾロには感謝しなくちゃ!だから見逃して貰えないかな?お願い……。』
「いいよ!」
あっさりOKだ。
お願い……。と言う台詞と共に、ダメ元でやった上目遣いは効果覿面だったようだ。
チビの上目遣いは可愛さ三割増しだ。
カナエが自分に虫酸を走らせているのは言うまでもない。
『もう一つ、お願いがあるんだけど。』
「何でも言って!」
上目遣いの効力で、何でも言う事を許してくれないだろうか。
『ゾロに最後のお別れを言いたいの。』
「えー、別にイイじゃん。ほっとけば?早く二人きりになろうよ。」
さすがに駄目か。
しかし、このままではゾロが納得してくれないだろう。
彼に事情を伝える機会がほしい。
『ちゃんと振っておかないと邪魔しに来るかも。私は嫌だな。』
「行っておいで!」
『行ってきます!』
チョロいなコイツ。
離れた所で待っていて、と言い残し、カナエはゾロに駆け寄った。
ゾロはまだ事態を理解できていないようだ。
怪訝そうな顔をこちらに向けている。
「おい、一体どういう……」
『ゾロ!今までありがとう!!』
大声で叫んでゾロに抱きついた。
モトキに聞こえないよう小声で話すには至近距離が一番。
こちらを見ているモトキは苛立った様子だが、最後のお別れ、と言う言葉を信じて大人しくしているつもりの様だ。
ゾロは狼狽えている。
疑われない為に背中に回して貰った手は、最強の剣士を目指す男とは思えない程ぎこちない。
『ゾロ、ごめんなさい。嫌かもしれないけど、このまま話聞いて。』