第36章 何してんの!?②
『私も、忘れられなかったみたい!』
鳥肌が立つ台詞だ。
心にも無い事を言った後、モトキに抱きついてみる。
突然の愛の告白。不意打ちを喰らって力が緩んだ彼の手からは容易に抜け出す事ができた。
「カナエ……?ホ、ホントに?」
『うん。久しぶりに会って自分の気持ちに気付いた。誰と付き合っても本気になれなかったのは、モトキがずっと心の中にいたからだって。モトキ以上に好きになれる人なんていなかったんだよ。』
相変わらず嘘をつく時は饒舌になる。
自分の口をもぎ取ってやりたい。そんな気持ちが顔に出ているのが分かった。
その証拠に、モトキの肩の向こう側に見えるゾロの顔の回りには、ハテナマークが幾つも浮かんでいる。
顔色とは正反対の行動を取るカナエに、何がしたいんだ、と言わんばかりだ。
「マ……マジ嬉しいっ!!俺、卒業した後すげー忙しくなっちゃってさ、気付いたらこっちの世界に来てたんだけど……」
『えっ、そんな前から?』
「そうだよ。だからさ、お前との事、微妙なままだったから気になってたんだ。ずっと忘れられなかった。」
だから音信不通になったのか。
特に気に掛けず、新しい女でも作っているだろうと半分忘れかけていた自分に罪悪感が募る。
あれから10年以上経っている。こんなに一途なイイ男だったなんて。
「こっちで誰とエッチしたってカナエみたいな名器にはなかなか出会えないし。」
前言撤回。最低だ、こいつ。地に落ちろ。
『わっ、私もモトキが一番相性が良いと思ってマス……。』
ああ、舌を噛んでしまいたい。
「同じ気持ちで良かった……じゃあさ、俺とヨリ戻してくれる?」
『もちろん!!』
モトキから少し離れて顔を見てみると、ぱあっと花が咲いたような顔でニコニコとしている。何とも情けない顔だ。
嬉しく思って貰えるのは女としてはありがたいが、理由が理由なだけに複雑な気持ちになる。
「早く二人きりになりたいけど、その前に邪魔者は消しておこうか。」
表情一変、モトキは鋭い視線をゾロに送った。
殺気を感じ取ったゾロは、ニヤリと笑みを浮かべて和道一文字を咥える。
彼は好戦的な男だ。一戦を交えるのは願ってもない展開なのかもしれない。
しかし、これでは元の木阿弥だ。