第36章 何してんの!?②
「へェ……?」
(そんな事言わなくても良いからー!!ゾロが引いている!!)
ゾロの頬がピクピクと動いている様に見える。
モトキは人生で初めて付き合った彼氏。
それなりに好きで仲が良くて、喧嘩もしたり、デートなんかもして。
何ヵ月か経つと年頃の二人は自然と身体を求め合うワケで。それが初めての経験だった。
「もうカナエとヤった?この子の中、最高でしょ?」
「あァ?」
(何言ってんだ!こいつは!)
先に卒業した彼とは時間が合わなくなり、その内なんとなく連絡する事が少なくなった。
だんだん気持ちが冷めていった。
別れる別れない、なんて話も無く疎遠になり、いつの間にか音信不通。
連絡が無くても特に気にならず、暫くして自分の生活環境も変わって彼の事は記憶の片隅にある程度だった。
まさか、こんな形で再会するなんて。
しかもドンキホーテファミリーの幹部とは一体どういう事だ。
「何黙ってんの?もしかして、まだだった?」
「教える義理はねェだろ。」
「その様子じゃ、まだなんだ。付き合ったばっか?」
「さァな。」
モトキは何か勘違いしているようだ。
ゾロもゾロだ。一言、違うと言うだけなのに。
わざと挑発でもしているのだろうか。
「でもさぁ、その程度の付き合いならカナエ返してくんない?俺さ、忘れられないんだよね。カナエもでしょ?」
『何なのさっきから!』
私も、とでも言って欲しかったのか。
口から手が離れたが、その手は腰を捕らえ
モトキとの密着度が増す。
『ゾロは……っ!!』
間違いを訂正しようとするとカナエのうなじに唇が触れた。
「これ、怪我でもした?……大丈夫?」
抜け過ぎた着物の衿。
ゆっくりと背中の方へ舌を滑らせていく。
「あー、カナエの匂い久しぶり……たまんない。ねぇ、こんな色っぽい格好しちゃって誘ってんの?」
『やめっ……』
「そのよく動く口、首ごと斬り落としてやる……!」
モトキの言葉、行動。全てが勘に障る。
言い終わると同時にゾロは刀を抜き、モトキを狙って飛び掛かった。
一気に間合いが縮まる。
鬼気迫るゾロの殺気。
だがモトキは、口元に笑みを浮かべたまま全く動じていない。
「俺の速度はソニード(音)!キミには追い付けないよ!」