第35章 やるしかない。
ただ何となく生きてきた自分が、これだけ強い意思を持ったのは初めてだ。
ローがいる大好きなこの世界だからこそ、そう思う事ができた。
なのに。
こうも簡単に帰れと言い放たれると、
カナエ的なキャラランキング上位のゾロだろうが、腹が立つ。
サングラスをかけていても、噛み付きそうな眼でこちらを見ているのが分かった。怖い。
カナエも、負けじとゾロを睨み付ける。
暫く沈黙が続いた。
どう思われたって構わない。
貶されたって、蹴り飛ばされたって、
彼らに纏わりついてドレスローザ編という超大作をクリアしてやる。
「なんだ、良い眼、出来んじゃねェか。」
『へ?』
先程の野獣はどこへ行った。
ニカッという擬音がピッタリ当てはまる笑顔でカナエを見ている。
「しっかり、ふんどし締め直しとけよ。」
『はい……!!』
ゾロに少し認めて貰えた気がした。
多くを語らずとも、思いの強さは伝わったようだ。
「おめーふんどし締めてんのか!?」
『違う!!』
ルフィに思わず突っ込みを入れた。
畏れ多い。
また心が浮ついてしまいそうで、カナエが顔をブンブン振っていると、店内がまた騒がしくなっている事に気が付く。
(そういえば、この後は……。)
藤虎の騒ぎで、呆然と立ち竦んでいた客達が、バックが無い、上着をやられたと慌てている。
だが、半ば諦めた様子。それもそうだ。
(信じてるんだもんね……。妖精の " 伝説 " 。)
人々は突然物が無くなる事を妖精の仕業だと信じている。
それが、トンタッタ族という小人達とは誰も気付いていない。
この国に潜む、真っ暗な闇にも。
「───!?さっきのおっさんスリでもやらかしてったのか?」
「そんな姑息な真似をするような奴には見えなかったが。」
(んん?)
ゾロとサンジが、腕を組んで店内を見渡していた。
「みんなやられたみたいだな。妖精が持ってったんだよ」
「妖~精~?さっきのおもちゃもそんな事言ってたぞ!」
近くにいた操り人形のようなおもちゃが、妖精伝説について語ってくれている。
……それを、興味深そうに聞く男達。
(んんんん!?)