第34章 そんな気分じゃない。
『危険な事だって分かってる!
それでも一緒に居たいから必死で働いてきたのに……そんな言い方しないでよ……。』
「働くって何だよ。」
『説明が長くなるから気にしないで。』
「とにかく帰れ。」
『あの……。』
「何だ。」
『台詞と行動が伴っていないのですが……。』
「あァ?」
カナエは今、ローの腕の中。
遠い目をしていた時に引き寄せられた。
帰れと言っているくせに、力強く抱き締められている。
「……そうだな。」
『そうだなって……。どうしたらいいの。
私は。』
「少し黙ってろ。」
ぎゅっ、とローは更に力を腕に込めた。
二年間、様々な感情が交錯していた。
カナエの居場所はハートの海賊。
それがお互い望む事。
しかし、こちらの世界に戻れば
必ず危険な目に遭うだろう。
彼女を失う事は、望む事ではない。
傍にいて欲しいのに、傍にいて欲しくない。
「チッ……もう面倒くせェ。」
耳元で聞こえた声は静かに体中に響き渡った。ローの胸の内を知らないカナエ。
血の気が引いた。
これはまずい。何故かキレている。
『えっ……ごめんっ!帰る!帰ります!!』
「帰るな!!」
『はあ!?』
急に肩を掴まれ怒鳴られた。
先程からずっとローの様子がおかしい。
暫く会わない間に、頭がおかしくなったのだろうか。
『何なのさ!!』
「考えるのが面倒くせェんだよ。
お前が俺をどう思っていようが関係ねェ。
何がお前の為かなんて、もう知るか。」
いくら考えても
正しい答えなんて無い事ばかりだ。
カナエを目の前にして勝手に動いたこの体。
それが自分の思いの全て。
あれこれ考えず、本能に従うまで。
「お前は、ただバカ面して笑ってりゃ良いんだよ。」
『バカ面って……』
「お前は死なせねェ。」
『…………うん。』
「俺の傍にいろ。それ以外は許さねェぞ。」
『んっ……』
突然、重ねられた唇。
ローに体を支えられながら、カナエはベッドに押し倒された。
激しく舌を絡ませ、二人の呼吸が重なる。
ローの手が、つなぎのジッパーを少しずつ降ろし、中に着ていた服を捲し上げる。
頬、耳、首筋と舌を這わせ、
既に固くなっていた胸の突起を舐め上げた。
『あっ……ちょっと待って!ここは……!』
カナエの聖域だ。