第34章 そんな気分じゃない。
二年前のあの日。
カナエが消えた後、ローはマリンフォードへ向かった。
「そいつをここから逃がす!!!
俺に一旦預けろ!!!俺は医者だ!!」
赤鼻の男からルフィとジンベエを受け取った、ハートの海賊団。
それを狙う、大将・黄猿。
命運尽きたかのように思えたが、
たった一人の海兵によって生み出された
"勇気ある数秒"。
黄猿の意識が少し逸れた。
この隙にポーラータング号はその場を出航した。
その時、ハートの海賊団が目にしたのは
"四皇・赤髪のシャンクス"の船。
シャンクス達の上陸により
戦場、マリンフォードの空気は一転した。
黄猿の動きが止まったのも、副船長のベン・ベックマンの威嚇によるものだ。
「キャプテン!"四皇"珍しいけど早く扉閉めて!!」
「ああ……待て何か飛んで来る!」
ルフィとジンベエを船に乗せた今は、一刻も早く海に潜らなければならない。
ローが扉に手をかけた時、黒い影が船に近づき、船内に勢いよく飛び込んできた。
「間に合った……!シャンクスと喋れた……!」
転がっていたのは、興奮状態のトミダ。
手には大事そうに麦わら帽子を握っていた。
シャンクスから直接、託されたようだ。
「キャプテン!」
早急に扉を閉め、ポーラータング号は海の中へ。
海水は凍り、無数の光線が船を目掛けて降り注いだが、何とかそれを躱して海底へと進んだ。
慌ただしく船員達が走り回る船内。
薄いゴム手袋をつけたローの元へ
医療機器やハサミ、メス、ガーゼなど、手術に必要なものが次々と集められている。
「乗せて……はあ……くれて、ありがとー……」
トミダは激しく息を切らしていたが、
シャンクスに接触できたのが余程嬉しかったらしく、顔がニヤついている。
その顔とは裏腹に、体中は傷だらけ。
床に血がボタボタと落ちていた。
ルフィとジンベエの手術が最優先だが、
こちらも早く手当てをした方が良さそうだ。
(あの程度の怪我で済むとはな……。)
いくら血の力があるとは言え、あの戦乱の中を生き延びたトミダ。
"麦わらのルフィ"に続く"三強"の名は伊達じゃない。
「ペンギン、そいつは任せる。」
「りょーかい。」
うるさいだけだと思っていた男を少しだけ見直した後、ローは二人の手術に向かった。