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例のイケメンは凶暴な男。【ONE PIECE 】

第33章 サニー号。



ナミにあんな事を聞いたのは
きっと、あの人の事を思い出しているのだ。

彼女が言った思い出を共有できる相手。

その言葉で、ベルメールさんについて全て悟ったに違いない。

(ナミ達は、もう受け入れてくれてるけど……)

ローがそうとは限らない。

『黙っててごめんなさい……。全部知ってる事……。』

こちらに背を向けているローは
今、何を思っているのか分からない。

怒りを露にされるだろうか。
それとも、すでに呆れられているか。

さっきは皆がいたから何も言わなかっただけだ。
今は、二人きりになってしまった。

(何を言われても仕方ない。覚悟しとかないと……。)

でも、ローに辛辣な言葉で責め立てられたら
嫌でも泣いてしまうかもしれない。
せめて顔を見ないようにしておかないと
きっと、耐えられない。

カナエは目を固く閉じて、下を向いて震えていた。

その時、ローの靴の音が聞こえて
こちらに振り向いたのが気配で分かった。
目の前に立っている。

(怖い怖い怖い怖い…………!!)

体が強ばる。
ぎゅっと拳を握っていた手から、変な汗が出てきた。

(耐えてくれ!私のハート!!!)

すると突然、顔が動かなくなった。
ローの大きな手に、頬をガッチリと掴まれているようだ。

(殺られる!?)

だが、しょうがない。
目を覆いたくなるような壮絶な人生を、
至極平凡な女に見られていたと知ったら、誰でも腹が立つ。
それに、このまま一緒にいたら
ローの緻密な計画に支障が出て、長年の彼の思いが無駄になるかもしれない。

(短い人生だった……。)

もう逃げられない。


しかし、カナエが覚悟を決めて息を止めた時だった。

吐息が近くで聞こえた。

そして、
唇に久しく感じる事のなかった感触が。

『ん……?』

これは、ローの唇。

思わず目を開けた。
それと同時に唇は離れていった。

ローの顔は慈しむような表情をカナエに向けている。

真っ直ぐ見つめる、その瞳の奥では
今まで見せたことのない程の情炎が燃えているように見えた。

ドクン、と破裂しそうなくらいの音を立てて
カナエの胸が高鳴った。

そんな顔をされたら、
心配していた事は全て勘違いだったのかと
ローがまだ、自分を求めてくれているのかと
期待してしまう。


「俺が怖ェか。」

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