第33章 サニー号。
チョッパーの向かい側の席では
主役、モンキー・D ・ルフィが
ミネストローネをがぶ飲みしている。
この世界に出てくる男達と比べたら
どちらかと言うと小柄な体をしているのに
誰よりも大食漢だ。
何度ボロボロになっても、彼から離れない
シャンクスから預かった大切な麦わら帽子。
目の下の傷。
人懐っこそうな無邪気な笑顔。
人を惹きつける天性のオーラ。
勇猛果敢な彼の姿をずっと見てきた。
苦しみや哀しみを乗り越えてきた姿も。
何があっても、無垢な心を剥き出しにして
いつも真剣に生きている姿は、人としての
とても大切な事を、たくさん教えて貰った気がする。
(や……ヤバい……。)
シャボンディ諸島で初めて出会った時よりは
遠くにいるルフィだが
彼を直視する事はできるだろうか。
「何だおめー。まだ腹減ってんのか?もう全部食っちまったぞ?」
カナエの口からは、またよだれが垂れていた。
(こっち見たーー!!まっ……眩しい!!)
「おっ……お腹いっぱいです……。」
やっぱり見る事ができない。
「ねえ、カナエ!」
『えっ……』
どこを見て良いか定まらず目を泳がせていると、突然、美女の顔が目の前に現れた。
ナミに名前を呼ばれてしまった。
自分なんかに一体何の話があるのだろうか。
「ハチの事でずっとお礼が言いたかったのよ」
シャボンディ諸島での事だ。
ハチの中の銃弾を、ローに頼んで取り出して貰った。
「あの時はありがとう。」
『私は何もしてないから!お礼なんて……』
「でも、チョッパーも随分助かったのよ」
「そうだぞ!怪我の手当てがすぐ出来たから、ハチの回復も早かった筈だ!ありがとな!」
自分は彼らに一方的に感情移入しているから
少しでも助けになりたいと思っただけ。
魚人に対する差別にぶちキレしているところも見られていたようだ。
こちらでは2年も前の事。
こんな風に律儀にお礼をされるとは思わなかった。
ナミに関しては、魚人に対して複雑な感情があるというのに。
(色々知っているのが申し訳ないな……。)
カナエはどうしていいか分からず俯いていると、ナミが顔を覗いてきた。
快活な笑顔をこちらに向けている。
「何か気にしてるみたいだけど、
私達はたいした事だと思っちゃいないのよ。」