第33章 サニー号。
「コーヒーは啜って飲むモンじゃねェんだよ!マナーも知らねェのか!?」
「あァ!?そんな女みてェな飲み方できるかよ!!」
サンジが青筋を立てていようが、
ゾロがコーヒーをズルズルと音を立てて飲んでいようが、
カナエには全てが輝いて見えていた。
(芸能人にも中々いませんよ!あれは!!)
輝いているような綺麗な金髪。
長めの前髪から覗いているのは、鋭い眼光を放つ力強い瞳だ。
暖かい気候だからだろうか。
ジャケットは脱いで、シワひとつ無いシャツにベストを着ていた。
捲し上げられた袖からは、細くても筋肉質で筋ばった腕が伸びている。
美味しい料理を生み出す男らしい手。
すらりと長い指先の爪は、きちんと短く手入れされていて清潔。
その指で煙草をはさむ姿は何ともセクシーだ。
そのサンジを、噛みつきそうな目で見ている
ゾロ。まさに野獣の様な男。
着物を思わせる服は前が少しはだけていて、
分厚い胸板が見えていた。
毎日欠かすこと無く、尋常でない量の筋トレをこなす三刀流の剣士。
彼の身体についた筋肉は芸術品のように美しく、特徴的な緑の髪の毛一本一本でさえも
強くたくましく生えてきている様だ。
(腹巻きカッコ良すぎ……何か二人ともエロいし……)
よだれが止まらない。
彼等のすぐ横の、いわゆるお誕生日席では、
チョッパーがわたあめサンドを食べていた。
最後のひとつの様で、名残惜しそうに口に運んで味わっている。
キュートな青い鼻に、クリクリの真ん丸な
清らかで澄んだ瞳。
身長は、人間で言うと3才か4才くらい。
サンドイッチを持っている小さな手で、
先程は手際よく点滴を施してくれた。
その時カナエはある事を試したくなって
チョッパーを誉めてみると、彼は期待通りの反応をしてくれた。
(抱っこしたいって言ったら怒るかな……。)
チョッパーも立派な男だ。子供扱いは嫌がるだろう。でも触りたい。
後で、頭なでなでくらいはさせて貰わなければ。
そんな事を考えていると、後ろからお下品な
げっぷとおならの音が聞こえてきた。
ブルックがソファに座って紅茶を飲んでいるようだ。
是非とも一曲演奏してもらって、クジラの
ラブーンの話を聞きたいところだが、
実写版のブルックはホラーでしかない。
カナエは振り向くのをやめた。
(もっと慣れてからにしよう……。)