第8章 宴
今日は主役なんだから。
と言う事で、カナエは宴の準備ができるまで部屋で待つ事になり、その間に部屋の整理と、着替えを済ませた。
『でかい……。』
部屋には、木箱で作った簡易ベッドがある。
先程、ベポとシャチが作ってくれたものだ。
カナエはそこに腰掛けていた。
(そういえば……今はいつぐらいの話の時なんだろう)
船員に、ローが引き込むはずの奴隷だった人は見当たらなかった。
(と言うことは、シャボンディ諸島よりは前……?)
カナエはこの先何が起きるのか、あやふやとは言え分かっている。シャボンディ諸島で起こる事件はもちろん、
ローの過去や、胸の内に抱えているものも。
(わざわざ話す事じゃ無い……)
彼らが考え、決断し、おのずと動いていく事だ。
(私はここに迷い込んで来ただけ。口出ししちゃいけないな。ローはきっと、そんな事しなくても自分の意思で進んでいくはず。)
カナエはなるべく黙っている事にした。
(そういえば、いきなりローとは呼べない……バラされそうだ。船長さんでいいか。)
「カナエ―!始めるよ―!」
ベポが呼びに来てくれた。
『はぁーい!』
とりあえず、自分の為に開いてくれる宴を楽しむ事にしよう。
これからの事は、きっと何とかなる。
カナエは宴の席に足を向けた。