第33章 サニー号。
(まさか……パンクハザード編すっ飛ばして、このタイミングで戻って来たとは……)
カナエは今、チョッパーの保健室にいた。
最初にこちらに現れた時程の疲労感では無かったが、念の為と言う事で点滴を打って、ベッドで休憩中だ。
(やっぱり、怒ってるかな……。)
ローの事を知っていた。
皆が辿る道も知っていた。
それを隠していた事を怒っているだろうか。
コラさんの事だってそうだ。
自分では容易に話せない事を、
知らない筈の人間が知っていた。
しかも平気な顔をして近くにいた。
嫌悪感を抱かない人間はいるのだろうか。
(嫌に決まってる。私の事、覚えててくれてたけど……軽蔑してるかも……)
トミダが元の世界で忘れられていたように、自分もこちらの世界では忘れられていると思っていた。
こちらではあれから2年も経っているが、一度抱いた嫌悪感は消えないだろう。
どう思われても、黙っていた事はちゃんと謝らなければ。
(謝って許してもらえるのか?……いや、許して貰おうと思って謝ってはいけない……。
それにしても……2年か……。)
カナエの世界ではたった半年。
仕事が忙しくてあっと言う間だった。自分はハートの海賊やローの事を思い続けていたけれど、彼等はどうだろう。
2年の間にローは七武海に加入して、新世界に入り、パンクハザード島でもドフラミンゴを討つ為の準備を着々としてきた。
(私の事、考えてる暇なんて無いか……)
もしかして考えるどころか、消えてしまった
ちび女なんて既に眼中に無いかもしれない。
ローはモテモテだ。
2年の間に立ち寄った島々に現地妻がたくさん出来ている。絶対。
(さっきは感動の再会!みたいだったけど、それはきっとローも不意を突かれたからであって、私はもう昔の女かも……血の力だって、うまく使えないから役立たずだし……)
こうなったらマイナス思考が止まらない。戻って来たは良いが、迷惑だったかだろうか。
(もう来ちゃったし……あまり深く考えないようにしよう。)
何だか悲しくなってきたカナエは、現実逃避する事にした。
(ローVSスモーカー見たかったな……VSヴェルゴも……)
あの時のローとスモーカーは超絶カッコいいんだよな……などと、ただの一読者の様な事を考えていると、隣のダイニングから賑やかな声が聞こえてきた。