第32章 大成功。
「サンジ君、この子……!」
「シャボンディ諸島の麗しきレディじゃないか……!!」
いつからここに居たのだろうか。
目が虚ろで顔色も悪い。
唇は紫色に変色していた。
魚人であるハチへの差別を目の当たりにして
一般人に大声で怒鳴っていた女が何故ここに。
「この子トーリの友達……その前にトラ男君の仲間よね!?どうしてここに!?」
「とりあえず外へ運ばねェと!氷みてェに冷てェ!」
サンジは彼女を軽々と抱き上げ、ナミと冷蔵庫から飛び出した。
「チョッパー!このレディーを手当てしてやってくれ!」
「えェ!?誰だそいつ!?」
ダイニングには、朝食を心待ちにしている船員達が席に着いていた。
そこには、目を見開いて固まったまま
サンジの抱いている女を見つめる男が二人。
「えっ!?スズキ!?」
「トラ男君!この子って……」
「黒足屋。」
ナミの言葉を遮ったかと思うと、
いつの間にか、ローはサンジの前に立ちはだかっていた。
「そいつは俺が連れて行く。」
「あ……あァ……。」
ローのただならぬ雰囲気に、サンジは背中が
ゾクリとした。
触れるなと言う無言の圧力が
ひしひしとローから伝わって来たからだ。
(ただの仲間じゃねェ……か。お熱いねェ。)
じゃあ頼んだぞ、とサンジからローに
カナエが引き渡されると、彼女は少し目を開けた。
忘れられない、力強い腕に包まれる感覚。
たった半年離れていただけなのに、
薬品混じりのこの匂いが、ひどく懐かしく感じる。
『あ……ロー……?』
「お前……どこに現れてんだ。」
『へへ……過労死作戦だ~いせ~いこ~う。
出戻り……ました……。』
「ったく……………………遅ェんだよ。」
カナエは衰弱した体に何とか力を入れて
ローの首に腕を回した。
ローはカナエを抱いていた手に更に力をいれて
自然と緩んでいた口元を隠すように
カナエの首筋に顔を埋めていた。
また会えた。
「何か嬉しそーだなトラ男。良かったなー!」
「私達がいる事忘れてんのかしら。」
「ヨホホホ……。羨ましいっ!」
「くっそ。見せつけやがって。俺もロビンと……」
「ふふ……やめて欲しいわ。」
「ギャー!!」
トミダはサンジに灼熱の蹴りをくらった。