第30章 嫌われる事。
ローの話を、船員達は信じられない様子で聞いていた。いくらグランドラインとは言え、意思を持ったように海が動く事があるのだろうか。
「でもキャプテン!流されただけならまだ何処かに……」
「いや……いねェ。そうだろ?トミダ屋」
「ああ。トミダ屋って呼んでくれてありがとう!俺感激!!」
「死にてェのか。」
異世界の人間はこんな奴ばかりなのかと皆が溜め息をついた。
「俺は場を和ませようとしただけだよ……
スズキはもう海の中にはいないから安心しろ。」
「”世界に嫌われる事”……。俺の過去を知っている事と何か関係があるのか?」
「当たらずといえども遠からず……かな。」
「さっさと話せ。」
「分かったから!刀をこっちに向けるな!
……でも、条件がある。」
「条件?」
「今すぐマリンフォードへ向かってくれ。じゃないと、俺は何も言わない。」
ローは舌打ちをすると、船を動かすように指示を出した。
信じるか信じないかはあなた次第です。
と、どこかで聞いた台詞を言うと、トミダはロー達にはとても現実とは思えない事を語り出した。
ローの過去を知っている理由。
過去だけではなく、これから先に起こる事実を知っているという事。
異世界にはカナエやトミダのように、こちらの世界の事が広く知られているという事。
「どういう事だ……俺達は現実には存在しないと言う事か?俺達だって意志を持ってる」
「まあ……そう深く考えるなよ。トリップ物なんだから。」
「何言ってんだ……。」
トミダは遠い目をしていた。
「で、単純な話、これから先起こる事をお前達に教えると元の世界に戻されるんだ。」
予言者の様になってはいけない。
彼等の意志に水を差すような事をしたら、信念を曲げる事になる。それはこの世界の全てが変わってしまうと言う事。
「だけど俺達が原因で、たまにお前らはおかしな行動を取るから何かと理由をつけて止めさせるのはギリギリ、オッケー。でも、はっきり伝えるのは駄目。」
カナエは言ってしまった。
この世界で生きる事を拒否され、それを守ろうとしていたローも力を奪われた。
海に落ちた時、世界は”邪魔者”である
カナエだけを連れ去って行った。