第30章 嫌われる事。
「今の地震か!?ヤベェ!!」
トミダは医療室でベッドから転がり落ちていた。白ひげによって起こされた地震だと彼も気付き、慌てて船内を駆け回ったが誰もいない。
(船、動いてねェな!早くしねェと!あいつらどこ行ったんだよ!甲板か!?)
少し迷ったが、他とは違う大きな扉を見つけた。おそらく甲板へ続く扉。
「なんっだよ……これ!!」
思ったより重い扉に軽くキレながらも、何とか開ける事ができた。
トミダが甲板に目をやると、カナエが皆から離れて柵にしがみついているのが見える。
「スズキ!ヤベェぞ!早く行かねェと……
うおっ!近っ!」
扉を開けたすぐ横にローがいた。
「お前らは……一体何だ?」
「は?」
「異世界の人間が何故俺の過去を知っている……麦わら屋を助けてどうなる。」
(まさかあいつ……)
これは喋ったに違いない。大丈夫だと思ったが甘かった。
おそらくローに行く気が無かった。
ルフィの様に素直に聞いてくれなかったのだろう。思慮深いローを相手に手こずって、話すしかなくなったのが容易に分かった。
「スズキ!大丈夫か!?」
『なん……か……変……です……』
苦しそうな声。
皆が一斉にカナエを見た。
顔は真っ白、大量の汗。目は虚ろで、どこを見ているか分からない。呼吸も乱れている。
今にも倒れてしまいそうなカナエに船員達は駆け寄ろうとした。
しかしその時、全員が海の異変に気が付いた。
カナエの後ろに広がる水平線。
海面が異様に高くなっていて、こちらに近づいて来る。
「あれ……もしかして……」
「……ヤベェ!津波だ!!」
「シャチ!すぐに舵を取れ!!」
「アイアイ!!」
即座にローの指示が飛んだ。
先程の地震の影響だろう。
沖で津波に遭遇したら逃げてはいけない。
海底ならば些か安全だが、今から潜る時間も無さそうだ。
たが、白波が立つ前ならば乗り越えられる。 シャチは波に向かって船を直進させる為、ジャンバールを連れて操舵室に全速力で走って行った。
「おい!しっかりしろ!」
『ロー?……何か……苦し……』
抱き上げられる感覚と、聞き慣れた声でローが来てくれたと分かった。