第29章 帰る方法
カナエが呼び止めても、ローは振り返ってくれない。すでに船内に続く扉に手を掛けていた。
それを追いかけようと、走り出したその時。
『わわっ!!』
「うわっ!何だ!?」
微かな地鳴りの様な音と共に海面が波打ち始めた。船が小刻みに揺れている。
船員達はその場で何とかバランスを保っているが、もちろんカナエはすっ転んでいた。
『わーーー!!!』
それほど傾いてはいない甲板の上で
カナエはゴロゴロと転がってしまい、柵に叩きつけられたが、何とかそこにしがみついた。
「姐さん!どんくせェッス!!」
『返す言葉もございません……。』
ローや船員達が呆れた様子で溜め息をついた頃、船の揺れは収まり海は静になっていた。
どうやら今のは地震だったらしい。
ローとペンギンが話しているのが聞こえてきた。
カナエは柵にしがみついたまま、ある事を思い出す。
(今日……地震って……グラグラ……?)
これは、いよいよ時間が無い。
『ロー!!聞いて!!』
「!?」
今の地震はおそらく、白ひげのグラグラの実の能力。
もう、マリンフォードで戦争が始まってしまった。
『私は、皆の事を知ってたの!こっちの世界に来るずっと前から!』
ローも船員達も目を丸くした。
一体何を言っているのだろう。
さっき柵で頭でもぶつけたのだろうかと、皆
心配している。
『ルフィ達やキッドの事も、シャボンディ諸島での事も知ってた!マリンフォードで今から起こる事だって、この先の事だって全部知ってる!!』
「……どういう事だ。」
『信じてくれなくても良い!とにかく今すぐマリンフォードに行かないと後悔するよ!』
早く。早く行かないと。
『ローにはルフィが絶対に必要なの!こんな所にいたらルフィが死んじゃう!!』
「……あそこに麦わら屋がいるのか?」
『もうすぐ来る!!死んじゃったら全部めちゃくちゃだよ!目的なんて何も遂げられない!コラさんに顔向けなんて出来ない!ローはルフィを助けなきゃいけないの!!』
ローの頬に、汗が一筋流れ落ちた。
船員達はもちろん、10年来の付き合いのベポにも話した事は無い。
コラさんを知っている。