第29章 帰る方法
「テメェ……誰に向かって言ってんだ……」
ローは額に青筋が浮かび上がっている。
まるで大魔王の様なその顔。
今から魔界の門を開いて悪魔の手下を呼び寄せ、カナエを拷問にでもかけてしまいそうだ。
カナエは一気に冷静になった。
(怖い怖い怖い!!ごめんなさい!)
しかし言ってしまった事は取り消せない。
こうなったら勢いに任せて神経を逆撫でしてやろう。そうしたら、ムキなって船を出してくれるかもしれない。
『だってそうじゃん。行かない理由を私にして、本当は怖じ気づいてるだけなんじゃないの。』
「カナエ!やめて!」
『超大型ルーキーだとか最悪の世代なんて呼ばれたって、白ひげと海軍大将を目の前にしたらきっと瞬殺だもんね!』
「おいっ!」
『巻き込まれるのが怖いだけなんでしょ。そんな意気地無しじゃ、今生き延びたって新世界に入ったら直ぐに四皇に潰されるわ!残念でした!はっはー!!』
船員達は自分の顔が青褪めていくのが分かった。
(死ね!!自分!!!)
こんな事、微塵も思ってないのに。
こんなに嫌味な言葉が出てくる自分の神経を疑う。嫌われても仕方ない。
しかし、何としても行かないと全てが変わってしまう。
そして何よりも。
ローの今まで生きてきた目的が成し遂げられなくなる。そんな事はあってはならない。
(キレてくれて良いから行ってください……)
「理由を言え。」
『え?』
「俺を挑発したら、それに乗って船を出すとでも思ったのか。」
(バレバレ……)
「俺はそんな単純じゃねェんだよ。お前が必死になる理由を言え。」
『りっ……理由と言われましても……。』
全部知っている事を言えば、皆が混乱する。
でもローは、カナエの隠し事と、今の一連の言動が関係している事に気付いている。
昨日は無理に聞き出す事はしなかったが、やはり気になっているのだ。
白状すべきか、隠し通すか。
どちらがハートの海賊団の為なのだろう。
「言わねェんなら、この話は終わりだ。」
「あっ!キャプテン!」
「船長!もう少し話し合ってみても……」
その場を去ろうとするローを、船員達が引き止めてくれた。
だが、ローに聞く気は無い様子。
うまく仕向ける筈が逆効果になってしまった。
『待って!ロー!』
もう、言うしかない。