第29章 帰る方法
『何で!?』
「船長はカナエの事を考えて言ってるんだよ」
『……私?』
「いいか。今マリンフォードには白ひげに対抗する為に海軍が有する最高戦力が集められてる。」
『ロー……そうだけど……』
「海軍にも異世界の人間がいると爺さんが言ってただろ。海軍本部にそいつが居たとしろ。お前に気付かれるかもしれねェのに、こっちからわざわざ出向く事はねェ。」
そんな理由で行かないつもりなのだろうか。
トミダが言うように、自分達がこの世界に現れた事で何かがおかしくなっている。
このままではマズイ。ルフィが助からない。
トミダは、うまく言いくるめて軌道修正していると言っていた。
何とか船を動かすように仕向けなければ。
『大丈夫だよ。この黒い帽子があれば、異世界の人間って分からないから。』
「分かり難くなるだけだろ。対白ひげに召集されるような海兵相手に、そんな帽子ひとつで正体が隠せるとは思えねェな。」
『たっ……確かに……でも、白ひげ対海軍本部なんてすごい事件でしょ!見逃していいの?私は船の中に隠れてるから!』
「そんなに行きてェのか?」
カナエは無言で頷いた。
ローは納得してくれたのだろうか。
「船の中に隠れてるんなら、行っても仕方無ェだろ。」
(そりゃそうだ……)
『それでも行きたい。きっと海軍は私の事なんて見つける余裕は無いよ。』
「万が一って事もある。」
『潜水して海の中から様子を伺うってのは。』
「行かねェって言ってんだろ。」
『近くに行くだけでもいいから……。』
「駄目だ。」
何だこの頑固ボーイは!!!
この鋼鉄の意思をどう柔らかくしろって言うんだ!!!
『………………石頭。』
「何だと……?」
トミダの様に、うまく出来ない自分への不甲斐無さと、聞く耳を持たないローに怒りが込み上げてきた。
大事な時に間に合わないかもしれないという焦りもあって、もう何も思い付かない。
「おい……カナエ?」
プルプル震えているカナエの様子を見て、ペンギンは嫌な予感しかしなかった。
『わからず屋。この根性なし。』
「カナエっ!キャプテンに何て事言うのー!!」
「落ち着け!カナエさん!」
船員達は慌てている。
こうなったカナエはどんな暴言を吐き出すか分からない。