第29章 帰る方法
[白ひげ海賊団2番隊隊長”火拳のエース”
公開処刑確定!!!]
『えっ……』
「どうした?」
忘れていた。
記憶が曖昧にも程がある。
これはシャボンディ諸島で配られた号外。
その時、オークション会場にいたハートの海賊団は記事を見る事は出来なかった。
天竜人の一件から一週間は経っている。
処刑の日取りは何時だった?今日は一体何日だ?
(どっ……どうしよう……思い出せない!こんな所でのんびりしてて良いのか!?)
瀕死の重傷を負ってしまうルフィとジンベエを、ハートの海賊団が助けなければならない。
シャボンディ諸島と、処刑の執行されるマリンフォードは近いけれど、ここから一体どれくらい時間が掛かるのだろう。
事が起きるまで、まだ時間があれば良いが、
間に合うのだろうか。
船は碇を下ろしたまま、誰もそこを動こうという素振りは無い。
「おーい。カナエー?」
カナエはチラシを握り締めて冷や汗をかいていた。それを心配して、ペンギンが顔を覗きこんでいる。
『はっ!ペンギンくん!!』
「うおっ!何だよ!急にでけェ声出すな!」
『ねぇ!この処刑っていつ!?』
「今その話をしてたんだよ。丁度今日なんだ」
『きょっ………………今日!?』
カナエの慌てた様子を不思議に思いながら、ベポが持っていた新聞を見せてきた。
「号外の後に詳しい事が記事になってたんだ!公開処刑は今日の午後3時!」
『今……何の話をしてたの?』
今からマリンフォードに向かう相談なら良いが。
「”火拳のエース”が処刑されるとなったら、白ひげが動くのは当然なんだ。奴は仲間の死を絶対に許さねェ。」
ペンギンが、白ひげ海賊団について事細かに説明をし始めた。
カナエはよく分かっているが、口出ししないと決めた以上、黙って聞いている事にして頷いている。
「つまり、海軍と海賊の小競り合いなんて規模じゃねェ。戦争が起きる。分かるか?」
『…………うん。分かる。』
「理解が早ェじゃねェか。おそらく、今のこの時代が大きく変わる。」
ローが口角を吊り上げ、笑みを浮かべていた。この調子なら、このままマリンフォードへ向かうのだろう。
カナエは少し安心した。
『じゃあ、その時代の節目を是非見に行かなきゃね!』
「いや……行かねェ。」
『は!?行かないの!!??』