第29章 帰る方法
翌朝。
ポーラータング号は、シャボンディ諸島の近海で停泊していた。
皆揃って朝食を食べ、片付けをした後、
カナエは医療室へ足を向けた。
(まだ寝てる……早く起きろっつーの。)
トミダの肩に軽くグーパンチをして、いつもの様に洗濯物を干しに甲板へ向かった。
「手伝おう。」
『ありがと、ジャンバール。助かるー!』
彼は手が空いていると、よく手伝いをしてくれた。チビで非力なカナエと、全てが真逆のジャンバールは何故か馬が合い、良いコンビになっていたのだ。
「カナエ、船長と風呂には入ってやらんのか」
『蒸し返さないでよ……。』
「船長の気持ちを汲んでやれ。」
『どんな気持ちかよく分かんないんですけど……。』
「いいか。男と言うのはな……」
ジャンバールが男の心情を語り始め、カナエがうんざりしていると、久々にニュース・クーがやって来た。新聞の束を抱えて、息を切らしながら飛んでいる。
ベポがそれを受け取り、きっちりお金を支払った。
大量の新聞はドサッと甲板に広げられ、ローと船員達がそこに集まって来た。
約一週間分の新聞を、古い日付から順番に皆で読み回している様だ。
(何か皆、難しい顔して読んでるな……。洗濯物干したら見せて貰おうかな。)
元の世界では新聞なんて、あまり興味が無かった。
あえて見ると言えば、番組表か四コマ漫画くらい。世の中の情勢はニュース番組を観たら大体把握できるし、番組表だってテレビで確認できる。
(テレビなんて無い世界だもんね……私すごいテレビっ子だったのに……無くても平気なもんだな。)
海賊をやっていると、そんなものより今を生きる事の方が大事になってくる。
カナエとジャンバールは洗濯物を干し終えて、何やらあーだこーだと話し合っている皆の元へ行った。
今こちらの世界では何が起きているのだろう。
『ペンギンくん、私も読みたい。』
「すげェ量だぞ。カナエ、読めるか?」
『頑張ります。』
「 じゃあ、古いのからな。えーと………何処行った?」
乱雑に置かれた新聞は、日付がバラバラになってしまっていた。
まずは日付順に並べた方がよさそうだ。
ペンギンとカナエが新聞の山を掻き分け始めると一枚のチラシを見つけた。
一際目立つ字体で、[号外!!] と書かれてある。