第29章 帰る方法
「船長ー!カナエさーん!御飯ですよー!」
カナエが何か言いかけたところで、シャチが部屋に入ってきた。
「ガーン!!」
カナエとローはピッタリくっついたままだ。シャチはショックを受け、昭和的なリアクションをしていた。
『もうそんな時間!?シャチごめん!』
調理補助と言う仕事を疎かにしてしまった。
「良いんだ!二人が幸せそうなら!応援するって決めたんだ……!」
会話が成り立っていない。
色々考えても正解が導き出せるとは思えない。
呑気に寝ているトミダが起きたら分かる筈。
ローは点滴を新品に交換して、二人はキッチンに向かった。
(あー、駄目だ。体動かねェ……。)
一人、医療室に残されたトミダ。
実は先程の二人の会話を聞いていた。
(あいつら何で分からないんだ……。早く教えてやらないと……スズキの考えなら大丈夫かもしれないけど、万が一って事もあるしな……。)
トミダの体には、思った以上に疲労が溜まっていて体が言うことを聞かず、言葉を発する事も出来なかった。
(それにしても、俺が寝てると思ってイチャラブしやがって……くそ。羨ましい。)
ナミとロビンは全く相手にしてくれない。
(あいつ……なんか顔つき変わったな……)
職場でのカナエは、ちゃんと仕事をこなして後輩達の指導もしている頼れる仕事仲間。
しかし、イマイチやる気や情熱は感じられなかった。
こちらの世界で会ったカナエは、何だか生き生きしている。
職場の人間とは何処か一線を引いた付き合いをしていた。話を聞く限りでは、おそらく今までの彼氏とも。
だがハートの海賊団では、昔から仲間だったかの様に馴染んで、そこに居る。
(帰りたくないだろうな……)
カナエは妹の様な大事な後輩。
早く伝えてやらなければ。
だが今は、体力の回復が最優先。
朝まで眠れば少しは動けるだろう。
そうしたらカナエに話をして、ローに頼み事しなければならない。
また空を飛んで戦う為の体力を温存出来るように。
(明日ならまだ間に合う筈……。ルフィ……待ってろよ。力にはなれねェけど……)
そばに居てやりたい。
トミダは再び眠りについた。