第29章 帰る方法
トミダとカナエが現れた時期は違った。こちらの世界では随分昔の事でも、ワンピースを知っているのはおかしく無い。
しかし、この先を知っているだけで帰る事が出来る訳では無さそうだ。
それを書き記す事は出来ない。
もっと別の方法。
「お前……何か隠してるだろ。何を知っている。」
『えっと……』
口出しはしないと決めた。
何の事だと、とぼけた方が良いだろうか。
でもローは何か勘づいている。
頭の回転が早くて賢いこの男に、嘘が通用するとは到底思えない。
正直に話したらローはどう思うだろう。
ローが考えている事や、壮絶な過去まで全て知っておいて、平気な顔をしていた事に軽蔑されるかもしれない。
どうしたら良いのか分からない。
「まァ……言いたくなったら言えば良い。」
カナエが言葉に詰まっていると、ローが先に口を開いた。
ローは答えを急いでいる訳ではないようだ。
カナエは少しホッとした。
『帰る方法を聞く為に、お爺さんにもう一度会いに行ってくれたんだね……』
「あァ。結局何も分からなかったがな。
……そいつが何か知ってるんじゃねェか。」
『トミダさん?あ……そういえば元の世界に戻って、こっちにまた来って言ってた。』
「てめェ……それを早く言え。」
『死んだと思ったら戻ってたって。世界に嫌われる事が帰る方法……嫌われたら死ぬの?何をしたら嫌われるの……。』
「死んだ?」
『死ぬの嫌なんですけど……。それにどうやってこっちに戻って来たの……。頭パンクしそう。』
「目が覚めたら、聞いてみるしかねェな。」
『方法が分かったら、帰った方が良いのかな……。』
トミダが言っていた程、彼等はおかしな行動は取らない。
わざわざ口出ししなくても、血の力なんて無くてもローはきっと全てを成し遂げる。
ここに居ても邪魔者で、意味の無い存在なのかもしれない。
「……それはお前が決める事だ。」
帰りたいと言い出した時の為に、ローは老人に会いに行ったのだろう。その時、二人の関係は何も無かった。でも今は違う。
(自分で決めろか……。)
行くなとは言ってくれない。
帰るという選択をしても、ローは引き止める事はしてくれないのだろうか。
二人は出会ってまだ間も無い。
今離れたとしても、傷は浅いかもしれない。
『ロー……私は……」