第27章 忘れてました。
『それにしても、トーリって何ですか?飛べるから鳥ですか?ふざけてるんですか?』
話をしたい事があるのはトミダの方なのに
カナエの質問攻めが始まった。
「お前……それ、マジで言ってる?」
『え?』
「それ俺の名前だろ!!」
彼の名前はトミダ トウリ。
カナエは脳内で”トミダ”としか認識していなかった。
職場のシフト表等で見ていたはずなのに
忘れていた。
『そんなイケメン俳優みたいな名前でしたっけ………』
「本当に忘れてたのかよ……」
トミダは肩を落とした。
『いつからこっちの世界にいるんですか?』
「サンジが仲間になる前。俺、目が覚めたらバラティエに居たんだよ。」
『そんなに前から……』
元の世界で、カナエと仕事場の出入り口で別れた日。
ディナーのオーダーストップの時間に入ったゲストがやっとで帰り、諸々の仕事を終え職場を出たのは夜中。
終電の時間はとっくに過ぎていて、仕方なくタクシーで自宅アパートに帰って、力尽きた。
翌日からトミダも久々の連休で、起きる時間を気にせず寝ていたらチンピラコック達に起こされたらしい。
「ゼフが異世界の事知っててさ、働かせてくれたんだ。サンジと一緒にウェイターやってた」
『こっちに来てまでウェイターとは……適材適所っすね……』
「だろ?俺、優秀だったんだぞ。」
『それはどうでも良い。』
「何だよそれ!」
自分よりも後にこっちの世界に来たのに、現れた時期は違うようだ。
血の力が目覚めたのは、ドン・クリークとの戦いの時。猛毒ガスMH5が恐ろし過ぎて逃げようとしたら、空を飛べた。
『カッコ悪……』
「しょうがねェだろ!」
それを見たルフィが面白れェヤツだと興味を持ち、サンジと一緒に仲間に引き入れたのだ。
黒いマントを身に纏っているのは、灯台守のクロッカスの助言。ロジャー海賊団の船医をしていた時に異世界の事を知った。
何も知らずグランドラインに入って来る異世界の人間がいると、色々と忠告をしている様だ。
『その銃は?』
「ローグタウンでナミに買って貰ったんだ」
『男として情けない……』
「何ださっきから!」
空を飛べるだけでは頼り無い。
元々趣味で射撃場に通っていて、腕には自信があった。空からの攻撃もできれば大きな戦力になる。