第27章 忘れてました。
『あ……トミダさん……』
「反応薄いな!おい!」
「お前麦わらの一味の!」
「クロウマンじゃねェか!何の用だ!!」
トミダは船員達の前にふわりと降り立った。突然の登場に、カナエ以外の全員が慌てて戦闘体勢に入っている。
『そういえば、後で行くって言ってましたっけ……すっかり忘れてました。』
「ひでェな!それが10年近く世話になった先輩への物言いか!!」
入社して直ぐに配属された先で、カナエの教育係を担当したトミダ。
そこからずっと同じ職場で働いてきた。
二人の付き合いは長い。
『何か用ですか?』
「相変わらず俺に態度悪ィな……泣いちゃうよ?」
『敬語使ってるだけ良いじゃないですか。』
「育て方を間違えたか……ぐす。」
カナエの完全にナメきった態度に
トミダは涙した。
警戒する船員達だったが、カナエの様子を見る限りは危険は無いだろうと判断した。
「スズキ、二人で話したいんだけど……」
『何ですか?』
「あっ!おい!」
ペンギンの制止を余所に、二人は船首の方へ行ってしまった。
「ヤベェな……あれ……」
「キャプテン呼んで来た方がいいかな?」
「呼ばなかったら怒るぞ……」
「呼んでも怒るだろ……あれ見たら……」
船員達に声が聞こえないように、二人とも背を向けて何やら話し込んでいた。
適度な距離を置いてはいるが、気の知れた間柄という事は見て分かる。
シャボンディ諸島でのトミダに対するローの態度を考えると、今の二人の様子を見せるのは恐ろしい。
「ベポ、お前が呼んで来いよ。」
「アイアイ……」
ベポはトボトボと船長室へ向かった。