第27章 忘れてました。
ポーラータング号は現在水上航行中。
船のコーティングの為、再びシャボンディ諸島の近くまでやって来た。
海軍本部がすぐそこだと言うのに、警戒網は随分手薄だ。格下の敵船が襲ってくる以外は、特にトラブルも無く航海を続ける事ができた。
あまりにも平和な時間が流れていたので、ハートの海賊団はカナエの提案で、船の大掃除をしていた。
『お別れする前に綺麗にしとかないとね。』
「お別れって……2、3日だろ?」
「ペンギン!文句言うな!カナエさんがやるって言うなら全力で取り組め!!」
「シャチはカナエの下僕だな……」
『シャチ、そのセリフ、ローにも言ってきて』
もちろん、この場にローは居なかった。
カナエがしつこく誘ったが、その代わりに
一緒に風呂に入れと言われ、直ぐに断ると
だったらやらねェと部屋を追い出されてしまった。
(聞き分けの無い子供と一緒じゃん!)
カナエは苛ついていたが、一緒に風呂に入る事を断り続けている自分も同じ。お互い様だった。
「それにしても、クリスマスを目の前にして
大掃除ネタなんてムードが無いね!」
『ベポ……何を言っているの……』
「よく分からないよ!」
その後も、船員達はせっせと掃除に励んだ。
日が暮れ始めた頃、船内は隅々まで綺麗になった。
全力で掃除をした船員達はもうヘトヘト。
甲板で川の字になって休憩をしていた。
『皆さんご協力ありがとうございます……』
「疲れたー!」
「でも、気持ち良いな。」
『でしょー。お世話になってる船だから、日頃の感謝を込めて、だね。』
皆、そうだな。と言いながら空を眺めていた。
(綺麗だな……)
都心では見る事の無い、広い空。
無数に広がった羊雲は、燃える様な太陽の色に染まっていく。
その雲の間を優雅に飛んでいる鳥もいた。
(お風呂くらい一緒に入っても良いかな……)
元の世界にいたら、こんな大自然の美しさを目にする事は無かったかもしれない。
自分の悩み事なんて、なんて小さいんだろうと思い知らされる。
(それより……何か忘れてるんだよな……)
暫くボーッとしていたカナエと船員達。
すると、雲の間を飛んでいた鳥が
猛スピードで船に向かって近づいてきた。
「おー!いたいた!」
『!?』