第26章 航海の日常。ピリピリ。
ポーラータング号は再び潜水中。
昼間の浮上中に海王類に襲われた。
ローが鬼哭を構えたが、仲間になったばかりのジャンバールが「ここは俺が」と買って出た。
巨体に相応しい腕力。自分の数倍もある敵を一撃で倒してしまった。
倒された海王類はまるで鰤の様だと
カナエは思った。
そろそろ船の食料も尽きてきた。
海王類が手に入ったのは有り難い。
半分は保存用に加工して、残りの半分はシャチが腕を降るって調理する事になった。
今夜はごちそうだ。
ジャンバールの歓迎会を開く事にした。
料理が出来上がった頃、ローや船員達はダイニングに集まってそれぞれ席に着いた。
カナエも皿やグラスを配り椅子に座った。
「あれ?カナエ、ここで良いのか?」
『良い。』
ペンギンの横に座ったカナエは、少し機嫌が悪そうだ。
いつもはローとベポの間に座っているのに。
ペンギンは恐る恐るローの顔を見てみた。
あちらも眉間に皺が寄っている。
(何だ一体……。何があったんだ……)
海王類を使ったお造りやしゃぶしゃぶ
それに煮付け。美味しい料理と一緒にお酒を飲んで、カナエの機嫌は良くなってきた。
しかし、カナエはローの方を見ない。
実は歳が同じだったジャンバールや、ペンギンとばかり話している。
酒が入ったローも、先程よりは雰囲気が和らいでいてベポやシャチと盛り上がっているが、その目はカナエを常に睨んでいた。
「おい。」
『………』
「おい。」
『………』
「てめェ……無視すんじゃねェ!」
『!!』
勢い良く立ち上がったローに驚き、カナエはジャンバールの後ろに隠れた。
楽しいはずの歓迎会が一瞬でピリピリムードに。
一体、二人の間に何があったと言うのだ。
「キャプテン!落ち着いて!!」
ベポは慌ててローの腕を掴んだ。
「俺はもう、全て知ってる。」
『それとこれとは話が違うって言ってるでしょ。』
「何が違う。理解できねェな。」
『理解して貰わなくて良い!そんな顔をしたって私は屈しない!!』
ローは鬼の形相だ。
ジャンバールの後ろでビクビクしながらも、
カナエに引く気は無い。
しかし、船員達には会話の意味が分からず
二人を止めようにも止められかなった。
ジャンバールも間に立たされ気まずそうだ。