第24章 忘れてねェか。
ポーラータング号は現在潜水中。
キッド達が去った後、ハートの海賊団は直ぐにシャボンディ諸島を離れた。
黄猿の目の前から消えた海賊達を、海軍は血眼になって探しているだろう。
事態が収束するまで身を潜めるつもりだ。
カナエとシャチは夕食の準備に取り掛かっていた。
体がヘトヘトで何もしたくないが、しっかり食べないと回復できない。
「カナエさん、船長におにぎり作って持って行ってくれるか?」
『了解。………私、ここに来ておにぎりしか作ってないな……ごめんねシャチ。料理が出来ない女で………』
「何言ってんだよ!俺は好きでやってるから良いの!気にしない!!」
カナエが自分の女子力の無さに落ち込んでいると、シャチが直ぐにフォローを入れてくれた。
良いヤツだね。と言うと、シャチは顔が真っ赤になってあたふたしていた。
『じゃあ、持って行くね。』
「すげェなそれ!よろしくー」
一番体力を回復しなきゃいけない人に、カナエは巨大なおにぎりを作った。
(少しは元気になるかな。)
『ロー、起きてる?』
「あァ。」
『寝ててよ………』
船長室を覗くと、ローはベッドに座って本を読んでいた。
この数時間で随分回復した様だ。
「血の力のおかげだな。」
『本当にそうなのかな……。おじいさんが言ってた力と違うし……』
「少し考えた……」
『力について?』
「あァ。人の力を支配する……攻撃力を上げるとか、相手の力を奪って動けなくするなんて事だと思ってたが、そうとも限らねェかもな。」
『違うの?』
「人には自己再生能力ってのがあるだろ。少しの怪我くらいなら放っといても血は止まるし、傷口は塞がる。」
『………うん。』
「損傷した血管からの出血を止める為に、そこに血小板が集まる。感染を防ぐために、白血球の一種が損傷部位から入った不要物を取り除く。その白血球から分泌された細胞が傷付いた場所に新しい組織を生み出し再生させて、強くしていく。」
『………はい。』
「傷が治るメカニズムに必要な組織や細胞を、お前の血の力が活性化させた……」
『………ほぉ。』