第23章 知らない。
今まで見た事の無い血の量。
こんなに血を流して、人は生きていられるのだろうか。
「カナエ!このタオルで傷口を強く押さえてろ!!」
『ペンギンくん!!どうしよう!こんな……!ローが死んじゃう!』
「船長は死なせねェ!俺達だって応急処置くらい出来る!!いいから止血してろ!しっかり押さえるんだ!」
取り乱しているカナエの手にタオルを握らせ、ペンギンは医療器具を取りに船内へ走った。
カナエは言われた通り、傷口を強く押さえる。
白いタオルはあっという間に真っ赤になった。
その他大勢の船員達が集めて来た
船内のありったけのタオルや布切れを次々と使うが、ローの血は止まらない。
何これ。何なの?
知らない。
知らない!
こんな話知らない!!
『ロー……うぅっ………』
目から涙が溢れ出てきてローの顔がよく見えない。
呼吸が上手く出来なくて、胸が苦しい。
口が渇く。
傷口を押さえている手が熱い。
死なないよね。
ここで死んじゃったら
何の為に今まで生きてきたの。
まだ、
あの人に会いに行くのは早すぎるでしょ。
『やだよ………ロー………』
「カナエ!どけ!」
戻ってきたペンギンがカナエを押し退けた。
シャチも横に来て、その場に医療道具を広げる。
もう何枚使ったか分からない傷口の布を取った。すぐに塞がなければ。
「あ………あれ?」
「え?」
ペンギンとシャチの動きが止まった。
二人共目を見開いて、言葉が出てこない。
『?』
二人の異変に気付いたカナエは様子を覗きこんだ。
すると、カナエも同じ様に目を見開いて動けなくなる。異変が起きたのはペンギンとシャチだけでは無い。
『ロー?』
「う………嘘だろ………」
「キャプテン!!」
「何だあいつら……どうしたんだ……」
ローの元に駆け寄る船員達の様子をキッドが見ていた。全員、呆然としている。
さっきまで泣きじゃくっていたカナエも涙が止まっていた。
「キッドの頭………」
それを一緒に見ていたダイスケが口を開いた。
「あの女………目覚めた。」
「!」