第23章 知らない。
『ロー!』
「キャプテン!!」
「くっ!!」
パシフィスタとの戦いで動くのが限界になっていたローをカナエとベポが引き寄せた。
黄猿は更に足を上げ、カナエ達に向けて高速の蹴りを繰り出す。
しかし。
「………あれ~~?おっかしいねェ~~……」
黄猿の足が蹴ったのは空中。
今の今まで目の前にいた海賊達が消えた。
「手応えはあったのになァ~~………」
「どけっ!全員どけ!!」
移動した先で、海賊達の下敷きになっていたのはダイスケ。
屈強な男達が自分の上に折り重なって、息が止まりそうになっている。
『あれ?ここって………』
全員がダイスケから降りた後、カナエは今いる場所がポーラータング号だと気付いた。
「キッドの頭に……従っただけだ……」
『え……キッドが?』
この大人数で移動するのは体力を消耗するらしく、ダイスケはその場にうずくまってしまった。
「すげェ……ホントに一瞬で………」
「これが血の力ってヤツか………」
ペンギンやシャチも、話には聞いていたものの驚いた様子でいる。
キッド達は動くのもやっとで甲板に倒れ込んでいた。
カナエとベポの横でローも仰向けに倒れている。随分息が荒い。
「キャプテン、大丈夫?」
「あァ………………………ウッ!!」
『!?』
ローが呻き声を上げると同時に、カナエは自分の手の生暖かい感触に気付いた。
ローに触れていた手の平を見ると、真っ赤に染まっている。
「キャプテン!!」
背中から脇腹の辺りがえぐれた様になっていた。甲板にどんどん血が広がっていく。
『ロー!!』
「さっき……移動する…前に……少し掠った……だけだ……」
黄猿の蹴りを喰らったのか。
掠ったなんて程度の血の量じゃない。
傷口からは、どくどくと血が湧き出てきて、
ローの顔は徐々に青褪めていく。
ローはこの先マリンフォードの頂上戦争で
ルフィとジンベエを助けて、ロッキーポート事件で名を挙げ、七武海に入る。
その後も、大好きな人の本懐を遂げる為に
やらなければならない事はたくさんある。
ローはこんな所で死なない筈。