第4章 一松
甘めのホットミルクで
口の中の気持ち悪さを忘れ
お粥でお腹を落ち着かせる。
『ご馳走様でした。』
あっさりテイストのお粥が
気持ちを大分落ち着かせてくれた。
『………ん。』
食べ終わるまで隣に居た
一松兄ちゃんは空になった
お椀とコップを見てホッとした
表情を浮かべた。
『嬉しそうだな…一松。』
思ったことをそのまま口にした
カラ松兄ちゃんは隣で大人しく
座っている。
『………うん。』
恥ずかしそうにそっぽ向いた
一松兄ちゃんの耳は赤い…。
久しぶりだな…この表情
胸の奥がポカポカしてきた。
『………っ、……。』
言葉がうまく見つからないのか
視線が定まらずあちこち見てる。
『カラ松兄ちゃん…?』
呼びかけてみれば頭を下げた。
土下座という形で、
『えっ…えっ…?』
『ヒヒッ…最高。』
人の土下座を楽しんでいる
一松兄ちゃんは笑顔だ、笑顔。
傍に駆け寄りたいのは山々だが
如何せん…下半身何も履いてない
『すまなかった…っ!!!』
カラ松兄ちゃんはただ一言
そう述べた…声を張り上げて。
『………うん。』
許す、でもなく許さないと
言う訳でもない私は卑怯者。
『俺はお前に…っ!!』
私の体の不調は決して
カラ松兄ちゃん"だけ"な訳じゃない
その先を言わないのは
気遣ってくれているのかな…
相変わらず最後は優しい…。
『何でも、する?』
ニッコリと微笑めば力強く頷いた
『梨。』
『…梨?What?』
『梨、10個くらい買ってきて?』
『あ、あぁっ!わかった!』
わかった瞬間に走り出し
全力ダッシュで部屋を出ていった。
いってらっしゃいも言えずに…、
『馬鹿じゃないの?』
『ん?』
『梨…あいつの分も入ってた。
最初っから…許す気なんでしょ。』
呆れたように溜息をはきながら
私の腰へと抱きついた。
温もりが何だか心地いい。
『そもそも…怒ってないよ。』
私の言葉に一松兄ちゃんは
ぎゅっと抱き締めてくれた。
あったかいなぁ……。
ねぇ、一松兄ちゃん。
私はもう怒り方さえ忘れたの
ただ…ただ、求められるだけに
生きる方が楽なんだよ…。