第3章 チョロ松
【チョロ松視点】
さすがの僕もやり過ぎたと思った。
大事な妹なのに傷つけられた所を
慰めるどころか更に傷を抉るとか
長兄を説教すら出来ない。
『………莉瑠。』
辛うじて起きている妹を
風呂からあげて急いで服を着せる
ズボンとか面倒臭いのはやめて
大きめの僕の洗ったばかりの
パーカーを着せれば下も隠れる。
小さい妹に大きめの服とか
下半身が熱くなってきたけど
今はそれどころじゃない。
頭を拭いて髪を乾かしてやれば
ドライヤーの風で更に眠そうで
部屋に運んだ時は寝ているだろう。
完璧に寝てしまう前に
デカパン博士から貰った薬を
飲ませれば冷たい水に吸い付き
ごくごくと喉を鳴らしていた。
薬を飲んだと確認し
妹をお姫様抱っこで連れていく。
(軽いなぁ…。)
平均の女子の体重を抱えた事は
ないけれど確実に軽いと思う。
食が細い訳じゃないけど
ここまで軽いのは精神的なアレ。
つまり、僕達のせいだ。
抱かれた妹の頭は僕へと凭れ
すやすやと寝息さえ聞こえてきた。
『…おやすみ。』
寄りかかる妹の頬へと
口付けを落とせば小さく反応する
それがまた可愛くて仕方ない。
(普通に愛せなくてごめんね。)
直接言えない僕はなんて卑怯なのか
ましてや、消えない傷を作り続けて…
許されもしない業を背負い続けたら
いずれ僕も…妹も、壊れてしまう。
わかってて僕は…僕達は止めない。
もう、止められないんだよ。
ガチャ…、
部屋のノブを回せばギィッ…と音を
立たせベットへと見やる。
『おっかえりぃ…。』
寝かけていたであろう
おそ松兄さんが手を振った。
『なに、まだいたの。』
『つっめた、何その塩対応。』
妹がこれから寝るベットの上で
『どけ、莉瑠が寝られないだろ。』
『一緒に寝ればよくない?』
『よくないからどけって言ってんの。』
話しても通じない兄は頑固として
その場からは起きないようだ。
僕は溜息をはきつつ兄の
傍らにそっと、妹を寝かせた。
『……ん、……』
小さな寝息が愛おしい…。
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