第1章 プリンセスの誘惑
余裕のある振りをしてはいたが、ローズからジルの名前が出た途端、思わず唇を塞いでいた。
(他のヤツの名前なんて呼ばないでっ・・・)
心の苛立ちそのままに、多少荒っぽく胸を揉みしだく。
「っゴメン、俺・・・っ」
そこで彼女の泣きそうな顔を見て我に返り、慌てて身体を離した。
(サイテーだ、もうちょっとで無理やりするところだった・・・)
彼女を怖がらせてしまったであろう行為に、今さらながら後悔の念が押し寄せる。
(・・・嫌われた、よな・・・)
彼女に嫌われたら、と思うと目の前が暗くなった。
「・・・ユーリに、・・よ」
と、ローズが赤い顔をしたまま何か言った。
「え?」
思考に沈んでいた為よく聞こえず、思わず聞き返すと、
「っだから、ユーリに釣り合う女性になるため、なんだってば!!」
物凄い勢いでそう言うと、ローズはまた布団をかぶってしまった。
(え、怒ってない・・・?俺に釣り合うって、えぇ!?)